昨年は、米国株式市場が史上最高値を更新、日本株市場でも急騰銘柄が続出するなど、株式市場を取り巻く環境は良好でした。ところが2022年に入り、日米の株式市場の雲行きが怪しくなっています。いま、株式投資家はどのように相場と向き合ったらいいのでしょうか?『人生を逆転する10倍株入門』(ビジネス社)の著者であり、自らも個人投資家として活躍した経験を持つ西野匡(アセットマネジメントあさくら)さんにお話を伺いました。

西野匡
(画像=西野匡)

西野匡(にしの・ただす)

「アセットマネジメントあさくら」のシニアアセットコンサルタント。1990年から太平洋証券(現・三菱UFJモルガン・スタンレー証券)に入社し、13年間に渡って証券営業に従事し、退職。そこから14年間、個人投資家として日本株を運用し、莫大な利益を挙げた。2017年に、IFA(証券仲介業)である「アセットマネジメントあさくら」に入社。個人投資家好みの中小型の成長株に着眼し、これまで数々の急騰株を発掘してきた。

ロスカットができない投資家の含み損が拡大!

――ここ最近、日米の株式市場が大きく調整する局面が頻繁に訪れています。含み損を抱えている個人投資家も多いと聞きますが、いかがでしょうか?

日経平均株価やNYダウといった日米の主要株価指数のチャートを見てもらえばわかると思いますが、株式市場は2022年に入って状況が大きく変化しています。世界中でモノの値段が上がって物価が上昇するインフレが顕著となっています。ウクライナ情勢の悪化も原材料費や資源価格の高騰につながっており、米国をはじめとする各国がインフレ抑制のために金利を引き上げるなど、金融政策の転換に舵を切り始めました。

政策金利の引き上げなど、いわゆる「金融の引き締め」は、一般的に株式市場にとってはネガティブです。米国では、NYダウやナスダック総合指数といった主要株価指数が安値を更新し、株式市場からマネーが流出している状況です。米国株の下落に比べれば、いまのところ日本株の下落は限定的ですが、それでもロスカット(損切り)ができない投資家は含み損が拡大している状況です。

――株式市場は完全な下落トレンドに突入してしまったのでしょうか? 結論から言えば、この夏の安いところは、個人的には「買い場」だと思っています。6月20日には、日経平均株価が2万6000円割れとなりましたが、このあたりが目先の底値と考えていいのではないでしょうか? 年内は下に行っても2万5000円、上は2万8000円のボックス圏での推移、中期的には緩やかに上昇に向かっていくと見ています。

――このような局面では、投資家はどのように株式市場と向き合っていくべきでしょうか?

相場環境も大切ですが、いつでも心がけなければいけないのが「ロスカット(損切り)」です。先ほど、ロスカットができない投資家は含み損が拡大していると言いましたが、逆にロスカットをしっかりと実行できている投資家は、現在のような相場環境でも利益を出し続けています。特に、昨今のような相場では、タイミングさえ間違えなければ、有望な銘柄をバーゲンセールで買うことができるのですから。

25日移動平均線を下回ったら、潔い撤退を

――西野さんの考える損切りのルールを教えていただけますか?

まず、基本となるのが、日足チャートによる25日移動平均線です。チャートをまったく見ないという株式投資家はほとんどいないと思いますが、実際の値動きだけではなく、株価に絡みつくように推移している移動平均線の動きに着目してください。移動平均線とは、一定期間における終値の平均値を線でつなげたもので、売買タイミングの決定に非常に役立つ指標なのです。相場の環境にもよりますが、私は基本的に保有銘柄が25日移動平均線を割り込んできた場合に潔く撤退することをおすすめしています。

一方、あらかじめ下落率で損切りをルール化するという考え方もあります。たとえば、銘柄を買った時点から10%、あるいは20%下がったら保有を諦めて損切りするというものです。この場合、気を付けなければいけないのが、損切りよりもプラス目標を高く設定することです。目標利益が5%なのに損切りが10%であれば、勝率が5割の場合、資産が減ってしまうことになるからです。ちなみに、直近IPO(株式の新規上場)銘柄に投資する場合には、買値から10%下がったら損切りをするようにアドバイスしています。

――なるほど、株式投資には時として損切りが欠かせないということですね。

その通りです。ただし、ロスカットを行った銘柄に再び投資するというケースもよくあります。特にIPO銘柄の場合、値動きが激しくなりがちです。いったん買値から10%下がって損切りしたものの、その後、再び騰勢を強め、高値を更新してくるケースは珍しくありません。高値を更新した銘柄は需給が改善し、上値が軽くなっていくものです。過去には、2度損切りして3度目のエントリーで大きな利益を取った銘柄もあるくらいです。

コロナ禍で燻っていた企業の株価が巻き返しへ

――いまから投資するなら、どのような銘柄を選ぶべきでしょうか?

まずは、昨年もしくは一昨年前に活躍した銘柄は外したほうがいいでしょう。そのような銘柄は、まだ含み損を抱えて保有している人も多く、「少し戻ったら売ろう」と考えている人がたくさんいるからです。「戻り売り圧力」と言われ、株価の上値が重くなりがちです。株式投資では、企業業績や将来性などのファンダメンタルズ分析は欠かせませんが、銘柄自体が持っている「需給」もとても重要なポイントになります。

そうしたところに着眼すると、インバウンド(訪日外国人観光客)関連はおもしろいと思います。長引くコロナ禍では、旅行や外食、サービスといったインバウンド関連の会社は大きなダメージを受けました。しかし、日本政府による水際対策も緩和の方向に向かっていますので、今後はそのような会社の業績が拡大路線に入っていく可能性は十分にあります。インバウンド関連では2017年に高値を取った銘柄が多く、休養は十分で「戻り売り圧力」も少ないと思います。このように新型コロナと相性が悪かった銘柄に出番が回ってきそうです。

たとえば、共立メンテナンス(9616)はビジネスホテル「ドーミーイン」やリゾートホテルを全国展開している会社ですが、株価はすでにコロナ以前の水準まで回復してきました。また、美顔器や家庭用美容など、健康機器メーカーのヤーマン(6630)も下落トレンドを脱し、上昇トレンドに転換してきました。外食関連では、名古屋地盤の居酒屋チェーンを運営するヨシックスホールディングス(3221)が連日の高値更新となっています。このように、足元の相場はコロナ禍で調整してきた銘柄を買う絶好のタイミングにあります。

――最後に、個人投資家に向けて、アドバイスをいただけますか?

私は、現在、「アセットマネジメントあさくら」というIFA(証券仲介業)で、個人投資家の皆さんに投資の助言などを行っていますが、私自身、過去には個人投資家として14年間、日本株に投資を続けていました。株式市場はとても夢のある世界で、資産の少ない個人投資家もやり方次第では、劇的に人生を変えることができるのです。

何十億円もの資産を持っている人であれば、配当を目当てに少しずつ資産を増やす安全な投資を行なえばいいでしょう。しかし、資産を持っていない人がそんなやり方で資産を劇的に増やすのは不可能です。そういう人こそ、高成長の新興企業に投資するべきだと思っています。

株式投資は業績のよい銘柄を当てるゲームではありません。株価が上昇する銘柄を発掘するゲームなのです。そのことを本当に理解している人は非常に少ないと思います。株価が下がってきても「業績がよいから大丈夫」といつまでも損切りせずに持ち続ける。その結果、どんどん株価が下がって、含み損が拡大していく。こんなことにならないように、ロスカットのルールを明確化して実行してください。

冒頭にも述べたように、2022年に入ってからの株式市場は非常に厳しい状況が続いています。現在は、インフレ抑制のために各国が利上げに踏み切り、株式市場にとっては逆風が吹いています。しかし、インフレを抑え込むことができれば、今度は景気浮揚や株価上昇のための対策が打たれることになるはずです。そういった意味では、株の買い場はすぐそこ、もしくは今なのかもしれません。