株式会社エムサス
岩渕 克人

岩手県生まれ。1997年、株式会社三洋警備保障千葉(現株式会社エムサス)入社。2009年4月、常務取締役に就任。2016年、専務取締役に就任。2022年6月、代表取締役社長に就任。現在に至る。

千葉トップクラスの警備会社が秘めたるものとは

株式会社エムサスは千葉県千葉市の本店を中心に、関東圏に合計7拠点を展開している警備会社だ。従業員はグループで400名を超えており、2023年のグループ総売上は20億円以上。約1万社あるとされている警備会社のなかでもトップクラスの実力を備えている。

株式会社エムサスの代表取締役社長、岩渕氏は語る。「エムサスの名前は、”M”がマスター、”S”がセキュリティ、”A”がアンド、もう一つの”S”がソリューションを表しています。警備のマスターは、確実なサービスを提供するという意味合いを持っているんです。」ちなみに2005年に刷新した社名とロゴは一般の方を含めた応募のなかから決めたのだとか。

株式会社エムサスとはいったいどんな企業なのだろうか。そこには、業界随一の実績を持つエムサスだからこそ秘めている“プライド”があった。

アルバイトから代表取締役社長になるまでの軌跡

株式会社エムサスは1996年、株式会社三洋警備保障千葉として現在の会長である斜木氏が創業。イベントやライフラインのメンテナンス工事、建設現場といった場面での警備・案内という一般的な警備業務のほか、2003年には高速道路の交通規制の設置・撤去といった専門的な警備業務にも着手を始める。そして2022年に岩渕代表が代表取締役社長に就任し、2026年には創業30周年を迎える。

実は入社前、警備業に全く興味がなかったと語る岩渕代表。バンド活動に没頭していたさなか、生活費を繕うため日雇いで単価が高いアルバイトを探していたという。「エムサスを創業した斜木会長との出会いは私がまだ20歳のとき、全く別の警備会社でした。正社員として別の仕事を探していたのもあり、職が見つかるまでのつなぎとしてその会社にアルバイトで入社。そして研修3日目に会社から正社員登用の誘いを受けて、「せっかくだからやってみるか」という軽い気持ちで、正社員として改めて入社しました。その後、所属した部署に異動されてきたのが今の斜木会長だったんです。数年後エムサスの前身の三洋警備保障千葉が設立し、私は半年後に仲間に入れてもらいました。」と目尻を下げながら朗らかに語った。

仕事では着実に結果を出し、27歳で支店長に就任。ここでも自分なら結果を出せる、そう思っていたのもつかの間、なんと就任してからの5年間で累計500万円もの赤字を計上してしまう事態となったのだ。

「当時は高速道路の規制警備に関するノウハウが社内に貯まっていない状況でしたから、とにかくいろんなことを思いついたら試していく繰り返しでした。最終的に自分たちに合った方法で利益が確保できるやり方を見つけて、なんとか500万円のマイナスを巻き返せた感じです。

その時期に一番意識していたのは「同じ間違いをしないこと」「同じところで悩まないこと」でした。例えば今年の4月に発生した悩みを来年の4月に悩まないようにするためにはどうしたらいいのか、きちんと向き合って必ず解決を試みるんです。逃げてしまうと結局前に進めませんから。」

そう語る岩渕代表。実はこの500万円の赤字を巻き返した直後に、父がガンで亡くなった辛い過去がある。岩手の農家で長男として生まれ、本来であれば地元に残って家業を継ぐ人生だった岩渕代表を「お前の人生だから」と言って東京に送り出してくれた父に対して、東京で結果を出さなければ帰れない…。父の逝去後はさらに仕事に邁進し、2009年には常務取締役に抜擢。そして2022年には代表取締役社長に就任することとなる。

エムサスの「流儀」

現在、警備業界の注目株として知られている株式会社エムサス。創業から心がけている流儀があるという。

ひとつは「高品質なサービスを均一に提供する」こと。千葉、東京、神奈川、茨城、どの地域にある支店であっても高いサービスを変わりなくクライアントに提供することで信頼を獲得するようにしている。そのための人材投資は惜しまない。東京都葛飾区に研修センターを新たに設置し、新しい人が加わったら必ず招集して、ハイレベルな講師による教育を毎回ほどこす。これによりどの支店であっても問題なくサービスを提供できる仕組みを整えているのだ。

だからこそ「決して安請け合いはしない」ようにすることも心がけている。警備業の基本は他人の命を守る仕事だ。値段の部分で折れてしまえば、自分たち自身の経営はおろかプライドも守れない。自分たちのサービスである警備力に絶対の自信を持っているからこそ、適正な価格で取引をおこなうことをモットーとしているのだ。

至極真っ当で地味なことかもしれない。だがこれを淡々と、確実にやり続ける姿勢こそが会社にとって一番大切なのだと岩渕代表は語った。

エムサスとして、業界として解決すべき課題

課題は山積みだ。なかでも頭を悩ませているのは人材確保の面である。一昔前のように、賃上げをすればいい時代は終わったと岩渕代表は語る。「今の学生たちは、日当1万5千円出すと言っても応募しようとすら思ってくれません。給与に加えて仕事の中身が魅力的である必要があるんです。ですから、この問題はどうにか何らかの形で変化させ、突破していかなければならないと考えています。」

また岩渕代表は、業界のDX化も目指している。警備業は警察庁との連携が必須な仕事で、基本的に警察庁が扱っているシステムに合わせて対応しなければならない。そのため警察庁による旧態依然の紙ベースでの書類が一部あり、申請をおこなっていた。それがここ数年で警察庁のシステムがデジタルに一気に方針を転換することとなり、対応に追われているという。

これからの警備業界を検討する全国警備協会の主要メンバーに選出された岩渕代表は、業界の円滑なDX化を目指し日夜業務に励んでいる。

「選ばれる」会社にするために

千葉で500社、全国では1万社を超える数が存在する警備会社。目下の目標は、創立30年までに全国の警備会社の売上ランキング100位以内にランクインすること。そしてエムサスを100年続く会社にすることだ。

「顧客から、そして自分たちの子どもの世代から選ばれる会社にするにはどうしたらよいか」をつねに考えているという岩渕代表。エムサスの今後の活躍に目が離せない。

株式会社エムサス

本社所在地
千葉県千葉市中央区富士見2-22-6 富士ビル3F
設 立
1996年10月1日
資本金
1,000万円
事業内容
関東全域で警備業を展開。犯罪の抑止・事故防止につながる真のプロフェッショナルとして、地域住民の方が安心して生活できるよう努めている。
企業URL
https://msas.co.jp/
代表者
岩渕 克人