有限会社幸和商事
大吉 充

1991年、有限会社幸和商事に入社。2020年、同社執行役員就任、長野市バイオマスタウン構想協議会会員就任。 2021年、信州大学『信州そるがむで地域を元気にする会』理事就任。2023年、同社代表取締役専務就任。

長生郡から世界へ。バイオガスのトップランナーとは

有限会社幸和商事は千葉県長生郡白子町にある会社だ。バイオガス発電装置の企画開発・サーキュラーエコノミーシステム(バイオガス装置+陸上養殖+植物栽培)の企画開発から、再生エネルギー関連施設の運営に関するコンサルタント業務、また自社工場にてFRP(繊維強化プラスチック)製タンクの製造や各製造工場などでのメンテナンス工事を行なっている。

会社本体は10名と少人数ではあるものの、協力会社の力を借りながら小回りをきかせ、ときには大型の案件にも対応している。FRP製品製造には30年以上も携わっており、製造した製品は世界各国で使用されている。

「自社工場でプラスチックと鉄やステンレス素材の製品を一気通貫で製造出来るのが弊社の強みです。バイオガス・サーキュラーエコノミー分野でも自社設計から製造、設置工事、運営、コンサルタント業務まで全て行うことが可能なんです。」そう語るのは、代表取締役専務の大吉充氏だ。

大吉専務に、幸和商事が歩んできた道のり、そして今見ている景色について話を伺った。

たどり着いた先は『環境・エネルギー・食』

プラスチック材料商社に勤めていた大吉専務の父が、当時急速に普及していたFRP(繊維強化プラスチック)に興味を持ち、材料商社として独立したのが幸和商事の始まりだ。FRPは薬品に非常に強く、さらに錆びない・軽い素材として知られており、工業分野で今でも必要不可欠なマテリアルとして重宝されている。その後、本来ものづくりの好きな父が自分で製造を開始したのをきっかけに手伝うような形で大吉専務は幸和商事に入社した。

しかし当時はバブルが崩壊した真っ只中で経営もとても苦しい状態が続いていた。そこで新たな分野への挑戦を決意し、何が将来的に伸びる分野なのか、人に喜ばれる仕事とは何なのか、と様々な分野を調べたという。

「ようやくたどり着いたのは、『環境・エネルギー・食』という3文字でした。私の子供の頃はしょっちゅう夏になると光化学スモッグ警報が発令されていた時代で、空がいつもよどんでいたのを覚えています。これを思い出すたびに高村光太郎の『智恵子抄のあどけない話』を思い出したものでした。美しい空を取り戻すには環境に優しいクリーンなエネルギーでなければいけない、そう考えたときにバイオマスというキーワードにたどり着きました。」と当時を思い返しながら語る大吉専務。

偶然にも取引企業様からバイオガスプラントの設備一式をお願いしたいとの申し出があり、これがきっかけで有限会社幸和商事はバイオガス発電事業へ本格的に参入する道を歩むことになる。

クリーンなエネルギーを作り、ゴミを減らす。これこそこれからの社会に求められる仕事であり、進む道だと確信した幸和商事。その後海洋生物の枯渇問題等のニュースをテレビで見るようになり、大吉専務はこれが最後のキーワードとなる『食』だと感じたという。早速自社工場内でラボを作り養殖を開始。現在では定期的にバイオガス技術の先進国であるドイツでの研修や中国・アジア地域へのコンサルタント業務も行っている。

「初めてバイオガスプラントの設備工事に携わったとき、イチから設備設計を担当させて頂きました。今まで自分でこれだけ大きな設備を単独で施工した経験が無く、緊張の毎日でしたが、無事完成までこぎ着けた事が自分にとって大きな自信となりました。」と大吉専務は語る。

そんな折、あるメッキ装置メーカーからの依頼で中国に弊社製品が輸出された事が切っ掛けで海外へ行く機会が増えた幸和商事。小さい頃から挑戦が大好きだった大吉専務は、一人中国へ出張し取引企業を探しに出かけていたという。この経験はとても重要な転機であり、その後中国で行なわれた『第一回バイオガス世界会議』に日本人として唯一招聘された。そして中国のバイオガス事業の相談にも呼ばれ、その後マレーシアやカンボジアでのFS事業(実現可能性調査)などにも関わることとなる。

よりたくさんの方に寄り添える会社に

現在、バイオガス発電装置やサーキュラーエコノミーシステムは今後の事業展開において最も大切な事業に位置づけていると語る大吉専務。まだまだ全国では成功例の少ないバイオガス発電だが、12年前から社内で様々な実験を通じて取得したそのデータを元に、数多くの企業や大学へアドバイスをおこなっている。

また今後はバイオガス発電を中心としたサスティナブルな街作りへの参画を検討中だ。耕作放棄地や荒れた山に養殖場を作り、バイオガスプラントから発生した消化液(発酵残渣)を堆肥とし田畑で米や野菜、牧草を育て、畜産をおこなう。排出された糞尿や観光に訪れたお客様の食残などはバイオガス発電の原料となる。棄てる物がないサスティナブルな環境を作りそこに働く場を提供し、過疎化問題も解決し、観光の名所となれば外からの人の流れが増え、活気のある街が出来上がる。行政やファンドの方々と連携をとりこのような街を沢山作っていきたいと考えているという。

『環境・エネルギー・食』というキーワードを中心にそれに関係する分野へ関わっていくことが重要だと語る大吉専務。再生可能エネルギーを利用できる装置の開発やペロブスカイト太陽電池と全個体バッテリーを合致させた施設の開発、陸上養殖技術の向上を目指し、安心した生活を送れる手助けの出来る企業を目指していきたいという。

「今後はより企業様に寄り添える会社でありたいと思っております。単に言われたことの答えを知らせるだけで無く、お客様の困っていることに対応できるアドバイスや行動をしていきたいと思っております。」幸和商事が世界の環境意識を改革する日も近い。

有限会社幸和商事

本社所在地
千葉県長生郡白子町福島1944-1
設 立
1990年7月20日
資本金
1,000万円
事業内容
バイオガス発電装置の企画開発・サーキュラーエコノミーシステム(バイオガス装置+陸上養殖+植物栽培)の企画開発、再生エネルギー関連施設の運営に関するコンサルタント業務。また自社工場にてFRP製タンク製造や各製造工場等のメンテナンス工事を行なっている。
企業URL
http://kowashouji.com
代表者
大吉 誠司