プレシジョン・システム・サイエンス株式会社
田島 秀二

1976年4月アドパンテック東洋株式会社入社。1989年2月当社入社、4月取締役就任。1989年6月当社代表取締役社長就任(現任)。2021年1月、全自動PCR検査システムがそれぞれ「2020年日経優秀製品・サービス賞:日経産業新聞賞」(エリート インジーニアス)、「2020年日刊工業新聞・第63回十大新製品賞:本賞」(ジーンリード エイト)を受賞。2022年11月、令和4年秋の叙勲にて「旭日単光章」を受章。

日々の研究に欠かせない存在・PSSとは

千葉県松戸市にあるプレシジョン・システム・サイエンス株式会社は、バイオ関連業界向けに臨床検査の実用化に関する事業を、ワールドワイドに展開しているグローバル企業だ。

田島代表が学生だった当時、日本は高度経済成長期の真っ只中で、いわゆる公害が問題視されていた時期であった。応用化学科に在籍していた田島代表は、もともと興味があった環境物質の分析についてもっと深く知りたいと感じ、卒業後は理化学機器を取り扱う会社に入社。数々の研究所や臨床検査会社、検査センターの現場を相手に仕事をしていた。

まだ手作業で対応するような臨床現場が多かった1980年代、検査技師の方の苦労を解消しようと、田島代表は海外製の理化学機器(臨床検査機器)自動化装置を日本人向けに特注機として取引先に納めていた。もちろん作業効率は格段に向上したが、定期的な保守メンテナンスが必要不可欠だった。
そこで田島代表が知人に依頼し、納品した理化学機器の保守メンテナンスを目的として、1985年7月17日に設立した会社がPSSだった。

同年4月には取締役、同年6月には代表取締役となり、実質的な創業者となった田島代表。それまでとはまったく違った仕事に、驚きの連続だったという。「私にとっては研究対象が環境分析から人体分析(臨床検査分野)へ移り変わったとも言えます。まさに大きな転換期でした。」

コロナ禍の世界各地に普及した松戸のテクノロジー

1995年、PSSは微量分析技術として、マイクロ磁性ビーズによる目的物質を自在に分離、そして抽出できるマグトレーション技術(Magtration® Technology)を世界で初めて開発、国内外各国で特許を取得した。

そしてこのマグトレーション技術によって、様々な変化を間近で見ることができたのだ、と田島代表は語る。

最初の大きな変化は、遺伝子・DNA情報の活用技術分野において劇的におこった。その分野には極微量のDNAを数百万倍にも増幅できる技術(PCR)が不可欠だが、そのPCR技術を所有するヨーロッパ大手の会社に、PSSが開発したマグトレーション技術を持ち込んだところ、彼らは一目見ただけで採用を決定したのだ。その後もトントン拍子に話は進み、なんと欧州にある複数の有力会社とOEM契約を結ぶことに。現在では世界規模で影響力を持つ事業となっている。

そしてあの世界を震撼させたCOVID-19が蔓延していたときにも、マグトレーション技術は大活躍した。感染拡大を最小限にとどめるためにも、新型コロナウィルスに罹患しているかどうかを調べるPCR検査を手早く確実におこなう必要があった。そこで使いやすくシンプルに設計された全自動PCR検査システム「gene LEAD」が世界中の病院に導入されたのである。

その結果として検査の迅速化などの面で大きく社会貢献できた、そう語る田島代表の声には力強いものを感じた。

高分子から細胞へ。PSSの新たなる挑戦

そして今、PSSは次の革命に順応しようとしている。
それはがんや免疫等の細胞の世界だ。

今までPSSが研究開発の対象だったのは、DNAやたんぱく質といった高分子だった。これからは、それらを内包した、あるいは作りだしている生体物質そのもの、つまり細胞を対象とした分析分野にも対応していきたい考えだ。

世界の研究者、医療関係者の方々が苦心しながら取り組んでいる色々な手法やテーマが、PSSの目の前に並んでいる。今後、医療業界や学会にPSSがまた革命を起こすかもしれない。

「今年は今までの経験をつなげることで、新たな発想や技術を具現化し、業界にインパクトを与えるような存在を目指します。」と田島代表は意気込んでいた。

プレシジョン・システム・サイエンス株式会社

本社所在地
千葉県松戸市上本郷88番地
設 立
1985年7月17日
資本金
1億円(2023年11月7日現在)
事業内容
バイオ分野における検査・診断システムの開発及び製造販売等(装置及びソフトウェア・試薬・消耗品・メンテナンス・受託検査等)
企業URL
https://www.pss.co.jp/
代表者
田島 秀二