鍋店株式会社
大塚 完

1983年ワシントン大学卒。同年9月、株式会社EIEインターナショナルに入社。1993年、鍋店株式会社に入社。現在に至る。

創業300年。千葉随一の酒造会社とは

千葉県成田市にある鍋店(なべだな)株式会社は、江戸時代の元禄2年(1689年)に創業した、由緒ある酒造会社である。現在は香取郡神崎町に酒造蔵があり、事前に申し込みすることで見学が可能だ。

徳川綱吉の元禄時代から続く酒屋

江戸幕府5代将軍・徳川綱吉が政権を握っていた元禄時代は政治、経済が安定し文化が発達した時でもあり、また成田出身の市川團十郎が成田山にまつわる歌舞伎をお披露目したこともあったため、江戸から多くの庶民が成田山にお参りに来るようになった時代だった。

そして元禄2年 (1689年 ) に佐倉藩より現在の製造免許にあたる酒造株(1,050 株)をいただき、成田山門前にて醸造を開始したのが創業の経緯だ。

「仁勇・不動・麹ハウス」鍋店の躍進

第2次世界大戦中の物不足のため制定された企業整備令により、当時4つあった蔵を田園風景の広がる香取郡神崎町 (こうざきまち) の酒蔵に集約し、それ以来「仁勇・不動」を神崎蔵で醸造している。また、その昔は新潟や南部(岩手県)の杜氏さん・蔵人さんにお願いしていた酒造りを1997年から自社スタッフで行うことを決断し実行に移す。自社スタッフによる酒造りは初めてだったため、当初は失敗もあったという。「教科書や色々な文献を参考にしながら、またアドバイザーにも助言を頂きながら丁寧に酒造りを行った結果、平均点以上の酒が出来るようになりました。」と語る大塚代表。結果、 造り上げた日本酒はさまざまなコンテストで入賞することとなった。

また鍋店株式会社が所有している蔵では、麹室を除く酒造り工程のすべてが見学できる。麹菌は他の乳酸菌や納豆菌などにとても弱いため、本来一般の方の入室は禁じられているが、鍋店では「麹ハウス」を昨年の春に完成させ、一般の方も見学できる施設を作ったのだ。製造される麹は通常のものに比べ酵素力価が高く、輸出も視野に入れて販売しているという。

神崎町の麹を世界の「KOJI」へ

伝統産業の典型とも言われる日本酒業界において、飲酒人口の減少は死活問題だ。大塚代表はこの問題について「とにかく、一言でいうと「美味しい酒」を造り続ける事。そしてそれをアピールしていくことが必要だと考えています。」と話す。飲酒人口の減少を補うために、輸出に取り組んでいる鍋店株式会社。現在は東南アジアを中心に13カ国に日本酒を輸出しており、この輸出量を増やしていくことが目標だという。

また、神崎町にある酒蔵は成田空港から車で30分圏内という地の利を生かしてインバウンドのお客様を取り込み、佐原や成田の観光・食を含めた総合的な「酒蔵ツーリズム」を積極的に展開している。コロナ禍が明けて外国人のお客様の蔵見学は着実に増えていると大塚代表は語る。

「麹は日本食の味を司る味噌、醤油、酢、味醂そして日本酒のベースとなるものです。2013年の12月に『和食』がユネスコの無形文化遺産に登録されたように、日本の宝である『麴を使った伝統的な酒造り』は今年の秋に同じくユネスコの無形文化遺産に登録申請を予定しています。将来的には和食に続いて麹もまた世界に認められることになるでしょう。」と 言葉を紡ぐ大塚代表。次の300年に向けて、これからも日本の伝統産業に貢献していくことだろう。

鍋店株式会社

本社所在地
千葉県成田市本町 338番地
設 立
1921年7月1日(創業:1689年)
資本金
3,200万円
事業内容
日本酒・リキュールの製造販売。主な銘柄は仁勇と不動。仁勇は千葉県内を中心に販売、不動は全国約90店の専門店にて販売中。また成田山新勝寺の門前と酒蔵のある神崎町にて直営店を運営している。
企業URL
http://www.nabedana.co.jp
代表者
大塚 完