有限会社内房スバルソーイング
大阿久 俊孝

東京都墨田区出身。高校までサッカー部に所属し、東京都選抜を経験。美容専門学校卒業後、都内ヘアサロンにてスタイリストとして25年間勤務。2022年、有限会社内房スバルソーイング専務取締役就任。

パリコレブランドを陰で支えている立役者

千葉県南房総市に拠点を構える有限会社内房スバルソーイングは、1991年の創業以来、長年にわたって培ってきた確かな技術と柔軟な対応力で、日本のアパレル産業を支えてきた存在である。パリ・コレクションや東京コレクションなどにも出展する国内外の名だたるアパレルブランドの製品を縫製し、高品質な服作りに貢献してきた。現在はファクトリーブランドの展開にも注力しており、今千葉の繊維業界で最も注目されている企業の一つとして知られている。

そんな会社の専務取締役、大阿久(おおあく)氏は高校サッカーで東京都選抜を経験するほどの実力を持ちながら、都内で美容師として20年以上活躍してきた異色の経歴の持ち主。転機が訪れ、有限会社内房スバルソーイングを率いる身となったという大阿久専務が語る、事業への思いと今後の目標とは。

サッカー少年からスタイリスト、そして会社のリーダーへ

「神の子」マラドーナにあこがれ、小学校に入る前からサッカーに明け暮れていた大阿久少年。学校では東京都選抜にも抜擢され、そのままプロになるかと思っていたが、選抜チームの仲間や対戦相手の実力を見てがく然としたという。

「当時、静岡選抜だった(元サッカー日本代表を経験した)中田浩二や小野伸二と対戦したこともありましたね。間近でそういった才能のかたまりを見て、この人たちがプロになるのかと初めて思い知らされました。人生の大きな挫折としてはこれが初めてかもしれませんね。」と大阿久専務は当時を懐かしみながら語った。

その後サッカー選手としての道を考え直した大阿久少年は、子どものころからお世話になっていたスタイリストの背中を追い、美容師を目指すことに。厳しい下積みを経て、都内でスタイリストとして20年以上活躍していた。

所属していたサロンのオーナーを務めていた美容師時代の上司からは「全員に好かれる人間になれ」とよく言われていたという。「つまり相手の言いたいことを理解して共感できる視点を持つことが大事だ、ということです。そうでないとお互いに背中を任せて仕事に集中できないですよね。だからこの教えを胸に、社員の意見を汲み取り共感することを日々大事にしています。これは今の弊社の朗らかな雰囲気に大きく結びついていると思います。」と大阿久専務はことばを紡いだ。

美容師として実績を多分に積んでいきつつ、心のどこかでやりきったという思いがあった2022年に母の大阿久代表から「会社を継いでみないか」と言われ、運命を感じたという。「正直、もともと継ぐ気はありませんでした。ただ美容師に未練はありませんでしたし、今まで僕を育ててくれたといっても過言ではない会社と千葉に、これから恩返しをしていくタイミングだな…と心の何処かで思っていたのでしょうね。」と大阿久専務はゆっくりとことばを重ねていった。

18歳から84歳まで!どんな人でも安心して働ける会社づくり

今は「自分はミシンをうまく扱えるようにするために帰ってきたのではなく、社員が安心して働けるような経営を実行し、会社を継続させていく立場としてここにいる」と自負し、日夜経営の勉強を続けているという大阿久専務が率いている、有限会社内房スバルソーイング。

約30名が働いており、18歳の期待の新卒から84歳の大ベテランまで、文字通り老若男女問わずやりがいをもって取り組んでいる。現在は世界的に有名な複数のブランドの縫製を手掛けつつ、20代の社員を中心に開発しているファクトリーブランド「U Ra Chic(ユーラシック)」の展開にも注力している。

U Ra Chic の開発に携わっている野村さんは自分たちが得意な綿、麻の天然素材を使用し、「縫製の綺麗な白シャツ」にフォーカスしてカスタムできるシャツブラウスを目指したという。「U Ra Chic の商品開発を進める中でチームで何度も話し合ったところ、自分達の造りたいデザインとお客様が求めているものには大きな隔たりがあることがわかりました。そこからさらに話し合いを重ねサンプルを何度も造り直し、現在のデザインが生まれました。今年の2月には他社と合同の展示会を開催し多くのお客様からご支持頂きました。自社には大きな「強み」があると再確認できたからこそ、これから大きく発展していけるよう努力を重ねていきたいです。」

千葉の縫製業界をリードする存在として

地元の人材の積極採用、そして東京都内でのサンプル工場開設を目指している有限会社内房スバルソーイング。高級旅館やリゾートホテルが並ぶ地域に拠点があることを活かし、今後は南房総のリゾートウェアとしての販売展開も検討しているという。

「もちろん弊社に来てくれるのは嬉しい限りですが、まずは少しでも多くの若い方々にアパレルの現場、そして縫製業界に興味を持ってもらうのが第一だと考えています。なので工場見学を開催させてもらったり、地元の高校で授業の一コマをもたせてもらったりと、各方面からご協力いただきながら発信を続けています。」そう語る大阿久専務が率いる、有限会社内房スバルソーイング。これからも千葉の縫製業界をリードする存在として活躍し続けるだろう。

有限会社内房スバルソーイング

本社所在地
千葉県南房総市検儀谷48
設 立
1990年11月29日
資本金
1,000万円
事業内容
シャツを中心に、国内外のアパレル・布帛縫製業の展開を行っている。
企業URL
https://subaru-sewing.co.jp/
代表者
大阿久 孝子