
GAFAMをはじめ、世界最大規模の企業が集結するアメリカ株。アメリカ株の株価を長期的に見ると、ダウ平均、S&P500、ナスダックともに右肩上がりといえるでしょう。米国経済の活発な動きが顕著に反映される隆盛のアメリカ株ですが、実は1株数百円で投資できることをご存知でしょうか。
ここでは、そもそもアメリカ株とは何か、日本株との違いや特徴など、基礎知識を徹底解説。メリットだけでなくデメリット、アメリカ株投資におすすめの証券会社や銘柄も紹介しますのでぜひチェックしてください。
目次
アメリカ株取引の基本情報
アメリカは世界最大の経済大国なので、株式市場の規模も世界最大です。日本株の投資経験がある方であってもアメリカ株を初めて知るとそのスケールの大きさや銘柄数の多さに驚くかもしれません。
これからアメリカ株に投資したい方が押さえておきたいポイントは下記の4つです。
- アメリカ株とはどんな株式のことか?
- アメリカ株の主な取引所
- アメリカ株式の代表的な株価指数について
- アメリカ株の取引時間について
ひとつずつ解説します。
アメリカ株とはどんな株式のことか?
アメリカ株とは、アメリカの株式市場に上場している株式のことです。
アメリカ株の魅力は、GoogleやAppleといった有名企業の銘柄を、日本の証券会社から手軽に直接売買できることでしょう。
アメリカ株について、知識を深めるには、まず取引所や株式指数について知ることが先決です。
それぞれ、紹介しましょう。
アメリカ株の主な取引所はどこ?
アメリカの主要な取引所は、2つあります。1つはニューヨーク証券取引所で、もう1つはナスダック市場です。どちらもアメリカのニューヨークにある市場で、ニューヨークは世界最大の株式市場を擁する世界的な金融都市です。
ニューヨーク証券取引所(NYSE)
名称のとおり、アメリカのニューヨークにある証券取引所です。ニューヨークのウォール街にあるため、「ウォール街」という言葉そのものが金融の街とのイメージにもつながっています。
ニューヨーク証券取引所は略称の「NYSE」と表記されることも多く、アメリカ株投資をしているとアメリカ株の銘柄名と並んで「NYSE」と表記されているものは、このニューヨーク証券取引所の上場銘柄であることを示しています。
ナスダック(NASDAQ)
ニューヨーク証券取引所と比べると比較的歴史の新しいのが、ナスダックです。ニューヨーク証券取引所と違ってハイテク株など新興企業の銘柄が多く上場されていることで知られ、世界的にも有名なIT巨人のGAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)も全てナスダックの上場銘柄です。
市場の規模は世界最大であるニューヨーク証券取引所に次いで2位なので、1位のニューヨーク証券取引所とナスダックを合わせたものが「アメリカ株式市場」を形成しています。
アメリカ株式の代表的な株価指数について
株式市場には、それぞれの市場の株価動向を示す株価指数があります。東証には日経平均株価やTOPIXがありますが、それと同じようにアメリカの株式市場にも株価指数があります。その代表的なものは、以下の3つです。
- NYダウ
- ナスダック総合指数
- S&P500
NYダウ
テレビや新聞の経済ニュースにもよく登場するのが、NYダウです。他の指数と違ってNYダウは特定の市場の平均株価などを示しているのではなく、ダウ・ジョーンズというニュース配信会社がニューヨーク証券取引所とナスダックからピックアップした主要30銘柄の平均株価がNYダウで、正式には「ダウ・ジョーンズ工業株価平均」といいます。
NYダウを構成する30銘柄は、企業としての知名度やセクターを代表する企業であるかなどの視点で数年に1回程度の見直しや入れ替えが行われています。
ナスダック総合指数
ナスダック総合指数は「総合」と名づけられているように、ナスダック市場に上場している全銘柄の平均株価を指数化したものです。1971年2月5日のナスダック平均株価を100として算出し、それに対して現在のナスダック市場の動向を知るのに用いられます。
S&P500
S&P500は「500」という数字のとおりアメリカ株の中で時価総額が大きい主要な500銘柄の平均株価を指数化したものです。NYダウと同じくダウ・ジョーンズが500銘柄の選定をしたうえで算出、公表しています。
NYダウと同様に構成銘柄は定期的に見直されているため、S&P500の構成銘柄に入ることは「アメリカを代表する銘柄」のお墨付きが得られたと見なされます。
アメリカ株の取引時間について
アメリカ株の取引時間はニューヨーク現地の朝9時30分から16時までですが、日本とアメリカには時差があるため、アメリカの各市場で株式の取引が行われている時間帯は日本の深夜に当たります。日本時間の23時30分から翌6時までが取引時間ですが、アメリカにはサマータイムがあります。
サマータイムの期間は1時間ずつ早くなるため、日本時間の深夜22時30分から翌5時が取引時間となります。
毎年3月の第2日曜日から11月の第1日曜日までがサマータイムですが、実はサマータイムというのは日本での呼称です。アメリカでは「デイライトセービングタイム」と呼ばれています。この期間は深夜22時30分のスタートで、それ以外の期間は深夜23時30分からのスタートと覚えておくと分かりやすいと思います。
なお、ニューヨーク時間の朝8時から9時30分はプレ・マーケット、夕方16時から20時まではアフター・マーケットといってそれぞれ立会時間外取引があります。
アメリカ株が注目されている理由
アメリカ株は、当のアメリカ人投資家だけでなく世界中から注目を集めています。もちろん日本人投資家からも熱い視線が注がれており、すでにアメリカ株投資を始めている人も少なくありません。
投資家にとって最大の目的は、お金をより効率よく、かつ安全に増やすことです。アメリカ株がこれだけ注目されるのは、その2つの要素がしっかりと備わっているからです。
投資家にとってアメリカ株が魅力的である理由や背景を、3つのポイントで解説します。この3点を知ると、アメリカ株にこれだけの注目と投資マネーが集まっている理由が納得できるのではないかと思います。
- アメリカ市場の株価推移
- アメリカの企業は株主優先主義
- 世界的な企業が集まっている
アメリカ市場の株価推移
株式投資をする人の多くは、キャピタルゲイン(株価の上昇による差益)を狙っています。そのために重要なことは、株価の値上がりが見込めることです。個別株についてはそれぞれの企業の事情があるので千差万別ですが、アメリカ株は長年にわたって右肩上がりの上昇を続けてきた事実があります。
その事実を如実に示しているのが、アメリカ株の代表的な指数であるS&P500の長期チャートです。

S&P500はアメリカの主要な500銘柄をピックアップして構成しているので、S&P500の価格推移はアメリカ株全体の動向を示しているといってよいでしょう。そのS&P500が一時的には押し目のような値下がり局面を見せるも、その後しっかりと回復して上昇トレンドを継続していることが見て取れます。
このチャートは週足なので、1週間ごとの値動きがチャート化されています。そして黄色の線が200MAといって200週移動平均で、この200MAを下回ることなく上昇が継続していると上昇トレンド継続と見なすことができます。2020年3月にあった「コロナショック」以外は全て200MAの上で推移しており、きれいな上昇トレンドが10年以上も続いていることになります。
アメリカの企業は株主優先主義
アメリカの経済的風土として、株主をとても重視する傾向があります。株主に見放されてしまうと投資が集まらないため、利益が出れば配当でしっかりと還元することが当たり前という価値観です。
配当を増やし続けている銘柄のことを連続増配銘柄といいますが、アメリカには50年、60年という長期にわたって増配を続けている銘柄がいくつもあります。
ちなみに日本で最も長い連続増配銘柄は、花王です。花王は配当について以下のように公式にアナウンスしており、配当を重視する姿勢を明確にしています。
安定的・継続的な配当の実施を通じた利益還元を重視しており、自社製品等をお届けする株主優待制度はありません。
引用元:花王「株主還元方針」
2020年12月期は140円の配当を実施し、31期連続の増配となりました。
ここで述べられているように株主優待をあえて行わず、その原資を増配に振り向けていることが目を引きます。
アメリカには株主優待という制度そのものがなく、花王のように配当を出すことを優先する風土があります。企業は自らの企業価値を高めて株価を上昇させることに努力し、その結果として利益が出ればしっかり配当で還元するため、株主にとってのメリットは日本より大きいといえます。
世界的な企業が集まっている
世界最大の経済大国であり、世界経済の中心はアメリカです。そんなアメリカには世界的に知られる有名企業、有力企業がたくさんあります。その中には日本でもおなじみの企業も多数含まれており、例えば以下のような企業はいずれもアメリカ企業です。
- GAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)
- コカ・コーラ
- ペプシコ
- マクドナルド
- ナイキ
- 3M
- P&G
- ジョンソン&ジョンソン
これらの他にも世界に名だたる企業はとても多く、そのほとんどがアメリカの株式市場に上場しているので、アメリカ株に投資することでそういったグローバルな優良企業の株主になることができます。
アメリカの世界的な企業にあるもう1つの特徴として、それらの企業がスタンダードを作り出している事実があります。例えばAppleはスマホを作り出し、コカ・コーラやペプシコはコーラ飲料を世界に広めました。こうしたスタンダードを作り出す力がある企業が多く集まっているのも、アメリカ株の魅力だと思います。
日本株式とアメリカ株式の違い
アメリカと日本には、それぞれ株式市場があります。投資対象として日本の株式市場も負けてはいませんが、日本株式とアメリカ株式にはいくつかの大きな違いがあります。ここではその違いについて以下の4点で解説します。
- 1株単位から取引が可能
- ストップ高、ストップ安がない
- 配当金の分配頻度が多い
- アメリカ株には株主優待がない
1株単位から取引が可能
日本株には単元株という概念があります。これは取引可能な最低単位のことで、多くの銘柄が100株を単元株としています。それに対してアメリカ株は1株単位で売買が可能なので、投資したい金額に応じて細かく株を買うことができます。
単元株
通常の株式取引で売買される売買単位のことで、単元は、ある一定のルールの元、企業が自由に決めることができる。
同じ株価であっても100株単位と1株単位とでは、投資に必要な金額は100倍の差があります。アメリカ株は好調なので株価が安くはない銘柄も多いですが、それでも1株単位で購入できることは少額から参入したい投資家にとってメリットとなります。
もちろん、GAFAMに代表されるような世界的なIT企業の株価であっても1株単位で購入できます。例えばFacebookから社名変更をしたMetaの株価は200ドル前後(2022年2月現在)なので、日本円にして約2万3,000円で株主になることができます(2022年2月現在、1ドル=115円として換算)。
ストップ高、ストップ安がない
日本の株式市場では「ストップ高」「ストップ安」という言葉を時折耳にします。これらは株価が一方的に大きく動いてしまうことを防ぐために設けられた制度で、株価が100未満であれば上下30円、200円未満であれば上下50円といったように株価に応じて設けられた制限値幅までしか変動しない仕組みになっています。
それに対してアメリカの株式市場に制限値幅の概念はなく、株価が一方的に大きく動くことがあります。ただしアメリカ市場にも相場の急変動があると自動的に売買がストップするサーキットブレーカーという仕組みがあります。
このサーキットブレーカーは個別株に対して発動するものではなく、S&P500が大きく下落したときに15分もしくは終日取引停止になる制度です。
配当金の分配頻度が多い
配当は株式投資のインカムゲインであり、重要な収入源です。日本の企業は年に1回もしくは2回の配当を出している企業が大半ですが、それに対してアメリカの企業は四半期ごとに配当を支払う企業が大半なので、1年に4回の配当機会があります。
もちろん配当の回数が倍だからといってそのまま配当額が倍になるわけではありませんが、配当重視で株式を長期的に保有する投資スタイルの人にとってこまめに配当を受け取ることができるのはメリットとなるでしょう。
アメリカ株には株主優待がない
日本では当たり前のようになっている制度であり、投資家によっては「優待名人」と呼ばれる桐谷広人さんのように株主優待を楽しみにしている人もいます。
しかし、アメリカ株式にはそもそも株主優待の制度がありません。株主優待をするくらいなら配当で還元するべきというほど配当でしっかり還元することが重視されているからです。
株主優待はその企業の商品やサービスを受け取れるものも多いですが、必ずしも自分の興味のある事業を手がけている企業に投資するとは限りません。しかもアメリカの企業から商品やサービスを送られても日本でそれを使うことが現実的ではないこともあるでしょう。それなら配当で還元してくれたほうがありがたいと考える投資家は、アメリカ株向きかもしれません。
アメリカ株投資の魅力(メリット)
日本の個人投資家にとって、アメリカ株はとても魅力的な存在です。その理由は、ここで解説する以下の5つのメリットがあるからです。これらのメリットを全て満たしているのはアメリカ株だけなので、1つでも多く魅力を感じるものがある方は、アメリカ株を検討してみてはいかがでしょうか。
- 少額から投資できちゃう!
- 分散投資もしやすい!
- 高配当銘柄が多い!
- 世界的な優良・グローバル企業が多い!
- 流動性が高い!
少額から投資できる
投資初心者にとって、少額から投資できることは重要です。最初からいきなり大きな資金を投じるのはリスクが高いので、慣れるごとに少しずつ投資額を増やしていくのがセオリーです。
その点、1株から投資できるアメリカ株は株価によっては少額から購入できるので、投資デビューをする人それぞれの投資金額に応じて調節することができます。1株から購入できるということは「株価=最低投資額」なので、この分かりやすさも魅力です。
分散投資もしやすい
投資先を分散するのは投資のリスク管理において基本中の基本です。特定の企業に集中投資をしていると、良いときも悪いときもその企業と「心中」することになります。
これだとリスクが高いので、複数の銘柄や投資先にリスクを分散するのが有効です。アメリカ株は1株単位で購入できるので少額であっても分散投資をしやすく、保有株の一部が暴落するようなことがあっても資産全体に致命的なダメージが及ぶことを防止できます。
高配当銘柄が多い
利益が出れば出資者である株主に還元するべきというのは、アメリカ全体にある企業風土です。そのため配当が高い銘柄がとても多く、VYMやSPYDといった高配当銘柄ばかりを集めたETFも人気を博しているほどです。
ETF
証券取引所に上場し、株価指数(「東証株価指数(TOPIX)」など)に代表される指標への連動を目指す投資信託で、「Exchange Traded Funds」の頭文字をとりETFと呼ばれています。
また、ほとんどのアメリカ企業は四半期ごとに配当を出すため、配当の高いアメリカ株を保有していると年に4回配当を受け取る機会があります。それぞれの企業の配当月が異なっているので、配当の高い銘柄を組み合わせて毎月配当収入が入るようなポートフォリオを構築している投資家もいます。
世界的な優良・グローバル企業が多い
アメリカの株式市場には、誰もが知っているような有名企業や超優良企業が多く上場しています。IT巨人といわれるGAFAMだけでなくマクドナルドやコカ・コーラといった日本でもなじみの深い企業もアメリカの市場に上場しているので、アメリカ株投資をすることでこれらの企業の株主になることができます。
世界的に展開しているグローバル企業が多いのもアメリカ市場の特徴なので、経営基盤が安定していて優秀な利益構造を持っている企業を探しやすいでしょう。
流動性が高い
アメリカの株式市場は取引量がとても多く、ニューヨーク証券取引所とナスダックだけで世界の株式市場のうち4割程度のシェアを占めているほどです。これだけ巨大な市場に世界中から投資マネーが集まっているのですから、活発に取引されている状況は容易に想像がつきます。日本人投資家にとっておなじみの東証ですらシェアは5.5%程度なのですから、いかにアメリカの株式市場が大きいかが分かります。
流動性が高いと希望する価格で売買注文が成立しやすいので、自分で立てた株式売買の戦略を実行しやすいメリットにつながります。
アメリカ株投資にはどんなデメリットがあるのか
とてもメリットや魅力が多いアメリカ株ですが、もちろんデメリットやリスクもあります。ここではアメリカ株のデメリットについて、以下の4点を軸に解説します。
- 為替リスクに注意が必要
- 日本株と比べて情報を得にくい
- 取引手数料に加え為替手数料がかかる
- ストップ高、ストップ安がないので思わぬ値動きをする
為替リスクに注意が必要
アメリカ株は日本円ではなく米ドルで取引されています。日本の証券会社からアメリカ株を購入する際には一度日本円を米ドルに両替し、その米ドルを使ってアメリカ株を購入する仕組みになっています。
逆にアメリカ株を売却したときには米ドルを受け取るため、日本円に戻すには口座内の操作で両替をする必要があります。
このように日本円と米ドルを相互に両替する際にはそのときのレートが適用されるわけですが、円安のときにアメリカ株を買って逆に円高になってからアメリカ株を売って日本円に両替をすると、為替差損が発生してしまいます。
アメリカ株に限らず外国株式は常に為替の影響を受けるため、そのリスクを押さえておいてください。
日本株と比べて情報を得にくい
私たち日本人は日本株に関する情報を得るのに最も有利な立場にあります。しかしその一方でアメリカ株の情報を得るには決して有利な立場にあるとはいえません。今はネットが発達しているので情報源は多くなりましたが、アメリカから直接情報を得るには英語力が必要です。
株式投資は情報力がモノを言うと考えている投資家にとって、情報を得にくいことはアメリカ株のデメリットになるでしょう。しかし、他の外国株と比べるとアメリカ株は投資人口も多く日本語での情報も多いので、外国株の中では比較的情報を得やすいと思います。
取引手数料に加え為替手数料がかかる
日本円からアメリカ株を購入するには、日本円をいったん米ドルに両替し、その米ドルを使ってアメリカ株を購入する流れになります。このとき、通貨の両替には手数料が発生します。手数料は証券会社によって異なりますが、例えばネット証券大手の楽天証券は以下のように規定しています。
取引手数料
取引が成立した際に金額に応じてかかる手数料。取引が成立しない場合には手数料はかからない。
10時および14時の適用為替レートで約定する定時取引については、各通貨毎に以下のスプレッドが加味されています。
引用元:楽天証券「外国為替の手数料」
通貨 買いのスプレッド 売りのスプレッド 米ドル/円 +25銭 -25銭
このスプレッドというのは、買値と売値の差です。楽天証券の場合は1ドル当たり25銭のスプレッドがあるので、1ドル=100円であっても実際に購入するときには100円25銭になります。この25銭のスプレッドが、実質的な為替手数料です。
ストップ高、ストップ安がないので思わぬ値動きをする
日本の株式市場にはストップ高、ストップ安があるため、株価が一方に急変動したときであっても値幅制限を超えて動くことはありません。しかしアメリカの株式市場にはストップ高、ストップ安の概念がないため、株価が一方向に動き始めると際限なく動くことがあります。
そのため思わぬ大きな損失を招いてしまうこともあるため、このリスクはアメリカ株投資をするうえでしっかりと留意しておく必要があります。
アメリカ株がおすすめな方
まだアメリカ株投資の経験がない方にとって、「どんな人に向いているのか」というのも気になる部分ではないでしょうか。アメリカ株にはさまざまなメリットがありますが、そのメリットのうち「少額投資」「配当狙い」「グローバル企業」「投資の多様化」といったところがポイントになります。
そのポイントから浮かび上がってくるのは、日本株にはない魅力です。例えばアメリカ株は全体的に配当が高い銘柄が多く、しかも年に4回配当の機会があります。この特性を生かして「配当金生活」を目指すことができるのもアメリカ株ならではの魅力なので、こうしたアメリカ株だからできることに魅力を感じている人が、アメリカ株投資向きだと思います。
そこで、アメリカ株投資に向いている人を4つのポイントに整理しました。
- 少額投資から始めたい人
- 配当狙いの投資をしたい人
- 世界的な有名企業に投資したい人
- 日本円以外の通貨にも分散したい人
少額投資から始めたい人
投資初心者は少額から始めるのがセオリーです。最初のうちは知らないばかりに失敗してしまうこともあるので、少額から始めて少しずつ慣れていくのが一番です。損をしてしまったとしても少額であれば勉強代と割り切ることもできますが、いきなり多額の資金を投じて大損をしてしまうと目も当てられません。
日本株は100株単位など、単元株と呼ばれる最低投資単位から買うことになりますが、アメリカ株は1株単位で買うことができるので、株価によっては1万円以内で買えるものもたくさんあります。
少額であってもリアルマネーによる株式投資であることに違いはないので株価が上昇すれば利益を手にすることができますし、配当もちゃんと受け取れます。
配当狙いの投資をしたい人
株の配当など投資で得られるリターンで生活できれば、と思ったことはありませんか?最近よく言われるFIREによる経済的自立を達成して悠々自適な暮らしを手に入れたいと考えている人は特に、株式の配当に投資の重点を置いているのではないかと思います。
FIREは「Financial Independence, Retire Early」の頭文字を並べて作られた造語で、単に早期リタイアだけを目指すのではなく経済的な自立とセットになっているところが1つの特徴です。
配当利回りが高く配当の機会が多いアメリカ株であれば、夢のFIREに近づきやすいのは確かです。しかも配当の時期が銘柄によってまちまちなので、うまく時期がずれている銘柄でポートフォリオを組めば毎月配当収入を得られる生活も実現できます。
配当利回り
配当利回りとは、株主が購入した時点での株価に対し、1年間でどれだけの配当を受けることができるかを示す数値。
配当利回りとは?
配当利回りとは、所有している株式の株価に対してどれだけ配当収入が得られているかを示す比率のことです。計算式は、以下のとおりです。
年間の配当収入 ÷ 取得株価 × 100 = 配当利回り
例えば100万円で取得した株の年間配当収入が5万円であれば、配当利回りは5.0%といった具合です。配当は株の売買をせずに持っているだけで得られる収入なので、配当狙いの投資を目指したい方は配当利回りにもしっかりと目を向けるべきでしょう。
世界的な有名企業に投資したい人
日本にも世界的な有名企業はたくさんありますが、アメリカにはもっとスケールの大きなグローバル企業が多くひしめいています。投資の神様ともいわれるウォーレン・バフェット氏は投資について「分からないものには投資しない」と語っています。
これは逆に考えると、自分が知っているもの、分かっているものに対して投資をするのは有効であるとも読み取れます。アメリカ株であれば社名だけでなく何をしている企業なのか知っている銘柄は多いですし、中には自分がその企業の商品やサービスを利用している場合もあるでしょう。
世界的な有名企業は、その地位に上り詰めた理由と強みがあります。そんな企業に投資することで、利益を狙うだけでなくリスクを抑える効果も大きくなります。
日本円以外の通貨にも分散したい人
私たちが普段使用している日本円は世界から見てもメジャーカレンシー(主要通貨)の1つであり、安定性にも優れていますが、これがいつまでも続くとは限りません。そこで検討したいのが、日本円以外での投資です。
金融庁は国民の資産形成についてたびたびメッセージを発しており、その中には日本円以外での資産運用についても言及があります。多様な国を投資先とすることによるリスク分散について、以下のように定義しています。
国内と国外、あるいは先進国と新興国のように、異なる国・地域の資産・通貨を組み合わせて投資を行うことで、例えばある地域の経済状況の変化等によって、保有している特定の資産・銘柄が値下がりした場合には、他の資産や銘柄の値上がりでカバーする、といったように、保有している資産・銘柄の間で生じる価格変動のリスク等を軽減することができます。
引用元:金融庁「投資の基本」
投資先を分散することによってリスクを抑えることができる特性を生かして、日本円だけでなく米ドルでの投資となるアメリカ株投資をしておくことで、日本だけを投資先とするよりもリスクを軽減できます。
分散投資のメリットとデメリット
リスク分散の観点からメリットが大きい分散投資ですが、メリットだけでなくデメリットもあります。メリットはリスクを分散できることで、「卵を1つのかごに盛るな」という投資格言が示しているリスク管理ができます。
その一方で特定の金融資産だけに集中投資をしているわけではないので、投資によるリターンも分散されてしまい、収益性は低くなります。
また、分散投資は分散できるだけの資金があることが前提になります。アメリカ株は1株単位で購入できるので分散投資をしやすいですが、それでも資金が少ないと購入できる銘柄の選択肢が少なくなってしまい、分散投資にこだわりすぎると有利な投資ができなくなる恐れがあります。
アメリカ株投資を始める証券会社を選ぶポイント
日本国内からアメリカ株投資をするには、アメリカ株を取り扱っている証券会社に口座を開設する必要があります。今ではほとんどの証券会社が取り扱っているので選択肢は多いのですが、選択肢が多いだけにどの証券会社を選べばよいのか迷ってしまう方も多いのではないかと思います。
そこでアメリカ株投資を始めるための証券会社選びで意識したいポイントを以下の6項目で解説します。
- アメリカ株の取扱銘柄数は多いか
- 手数料は安いか
- お得なキャンペーンがあるか
- 初心者にも利用しやすいか
- ポイントをためたり、利用したりできるか
- 取引ツールや情報コンテンツは充実しているか
① アメリカ株の取扱銘柄数は多いか
アメリカ株を取り扱っている証券会社は多数ありますが、その中身は同じではありません。最も大きな違いは、アメリカ株の取扱銘柄数です。アメリカ株に強いのはネット証券といわれているのでそれぞれ公式サイトで取扱銘柄数を比較すると、以下のようになります。
証券会社名 | アメリカ株取扱銘柄数 |
---|---|
4,576銘柄 | |
5,002銘柄※ | |
4,771銘柄 |
ネット証券3社はいずれも5,000銘柄前後を取り扱っているので大きな差はありませんが、それ以外の証券会社を利用する場合はアメリカ株の銘柄数を意識する必要がありそうです。
② 手数料は安いか
株式投資では、証券会社の手数料を意識する必要があります。特にアメリカ株に力を入れているネット証券大手各社は横を見て手数料を設定しているのであまり大きな違いはありませんが、それでも手数料は安いに越したことはありません。特に頻繁に売買をする人ほど手数料の影響が大きくなるので、手数料には常にシビアであるべきです。
ネット証券各社の手数料を見てみると、マネックス証券、SBI証券、楽天証券とともにアメリカ株の取引手数料は「約定代金の0.495%」となっています。ここは各社横並びですが、この3社はいずれも最低手数料を無料にしています。その無料となる条件が微妙に異なるので、それぞれの公式サイトから引用してみましょう。
・マネックス証券
取引手数料の端数処理の関係上、最低手数料0米ドルが適用されるお取引は、約定代金が1.11米ドル以下のお取引になります。
引用元:マネックス証券「米国株の最低取引手数料を無料へ!」
・SBI証券
当社取引手数料の端株処理の関係上、最低手数料0米ドルが適用されるお取引は、約定代金が2.02米ドル以下のお取引となります。
引用元:SBI証券「米国株式最低手数料はネット証券最低水準の0ドル!」
・楽天証券
最低手数料が無料になるお取引は、約定代金が2.22米ドル以下のお取引のみとなります。約定代金が2.23米ドル以上のお取引には、「約定金額×約定代金の0.495%(税込)」(最大22米ドル(税込))の手数料が適用されます。
引用元:楽天証券「米国株式 手数料」
約定金額
約定値段に株数を掛けて受け渡しが行われる総代金のこと。売り手と買い手の条件が一致して取引が成立した状態を「約定」と呼びます。
いかがでしょうか。手数料が無料になる条件は各社微妙に異なります。低位株といって株価が安い銘柄を売買することが多い方は、楽天証券が最もその上限が高いので無料で取引しやすいと考えられます。
③ お得なキャンペーンがあるか
証券会社には口座を開設した人に向けたキャンペーンや定期的に開催されるポイントアップなどのキャンペーンがあります。こうしたキャンペーンは該当する人にとってかなりオトクになるので、しっかり活用したいところです。
アメリカ株への投資に関心を持っている人が多くなる中、証券会社も集客のためにアメリカ株に特化したキャンペーンに力を入れています。そこで証券会社選びのポイントとしてキャンペーンの有無や内容を加えることは有益です。
例えば、マネックス証券には「米国株デビュー応援プログラム」というキャンペーンがあります。このキャンペーンはアメリカ株の取引手数料を最大3万円までキャッシュバックするというもので、3万円分までは無料で取引できるというものです。当キャンペーンは2022年2月末日までのものですが、今後同様のキャンペーンが開催された場合にはオトクに利用したいところです。

こうしたキャンペーンは他の証券会社でも頻繁に開催されているので、口座開設の前にぜひチェックしてみてください。
④ 初心者にも利用しやすいか
すでに日本株などの投資経験がある方であっても、アメリカ株が初めてという場合は新たに知っておくべき知識や概念があります。そのため、初心者にも利用しやすいかどうかも重要な比較材料になります。
操作しやすいことに加えて、電話など各種サポートが充実しているか、あとは証券会社からの情報提供がしっかりとあるかといったことは初心者にとって重要です。
⑤ ポイントをためたり、利用したりできるか
証券会社の中にはポイントシステムを採用しているところがあります。最も力を入れている証券会社の1つに楽天証券がありますが、楽天証券の場合はためたポイントを「楽天経済圏」と呼ばれる楽天系の各種サービスや日本最大級のオンラインモールである楽天市場での買い物に使うことができるので、ポイントの価値そのものが高いことが魅力です。
ポイントもため続けていると次第に大きな金額になるので、決してバカにはできません。証券会社選びにおいてはアメリカ株の売買に対してポイントがたまる制度があるか、そのポイントはどこで使うことができるのかといった部分も比較材料にするとオトク感がまるで違います。
⑥取引ツールや情報コンテンツは充実しているか
投資家にとって、証券会社の取引ツールは「武器」のようなものです。投資家にとって使いやすく必要な機能が網羅されているかは投資の成績にも影響します。
そしてアメリカ株は日本株と比べて得られる情報が少ないといわれがちなので、証券会社のサービスとしてアメリカ株の情報コンテンツがどれだけ充実しているかも重要です。
例えばマネックス証券にはアメリカ株取引専用のスマホアプリが用意されており、アメリカ株をメインに取引する方にとっては強力な武器となるでしょう。証券会社がこうしたサービスを充実させてきていることからも、すでに多くの投資家がアメリカ株に進出していることがよく分かります。
アメリカ株投資におすすめの証券会社
数ある証券会社の中でもアメリカ株に力を入れているのはネット証券が多く、競争し合いながら取扱銘柄数や各種サービスを充実させています。ここではそんなネ<>ット証券の中でも有力な以下の5社をおすすめしたいと思います。
- SBI証券
- 楽天証券
- DMM株
- マネックス証券
- PayPay証券
これらのネット証券5社のスペックを一覧にすると、このようになります。
証券会社名 | アメリカ株取扱銘柄数 | 取引手数料(税込) | 1米ドル当たりの為替手数料 |
---|---|---|---|
5,002銘柄※ | 約定代金の0.495% (0~22米ドル) |
25銭 | |
4,771銘柄 | 約定代金の0.495% (0~22米ドル) |
25銭 | |
1,632銘柄 | 無料 | 25銭 | |
4,576銘柄 | 約定代金の0.495% (0~22米ドル) |
買付:0銭 売却:25銭 |
|
146銘柄 | 基準価格の0.5~0.7% | 35銭 |
それでは上記のネット証券5社について、個別の特徴やスペックなどについて解説していきましょう。
SBI証券
SBI証券はネット証券の中では口座開設数がナンバーワンという、ネット証券界の雄です。アメリカ株の取扱銘柄数も2022年1月時点で最も多く、かなり力を入れていることが銘柄数からも伝わってきます。
①手数料が業界最低水準
ネット証券各社は手数料を競い合っている部分がありますが、SBI証券はその先陣を切って業界をリードしてきた部分があります。そのためアメリカ株の取引手数料は業界最低水準を維持しており、他社と比べて手数料面でそん色を感じることはほとんどありません。
ネット証券の世界は競争が激しいので、今後さらに手数料の引き下げ競争が起きるかもしれません。その場合もSBI証券は業界最低水準に合わせてくる可能性が高く、手数料面での大きなメリットといえます。
最低手数料を0ドルとしているネット証券はいくつかありますが、手数料が0ドルになる条件が緩いので適用されやすく、このメリットを享受できる人が多いのも見逃せない魅力です。
②アメリカ株の取扱数がトップクラス
2022年1月時点でSBI証券のアメリカ株取扱銘柄数はネット証券の中で唯一5,000を超えており、圧倒的な優位性を維持しています。ニューヨーク証券取引所とナスダック市場に上場している銘柄数は約6,000なので、SBI証券はその大多数を取り扱っていることになります。
単に取扱銘柄数が多ければよいというわけではありませんが、銘柄数が多いことは選択肢が多いこととイコールです。他社で取り扱っていない銘柄に投資チャンスが生まれたときに確実にそのチャンスをものにできるのは大きいでしょう。
③米国貸株サービスを提供している
貸株というのは、所有している株式を証券会社に貸し出すことで貸株金利を受け取ることができるサービスのことです。SBI証券にはアメリカ株の貸株サービスがあるので、アメリカ株を中長期的に保有する予定の投資家は貸し出しサービスを利用することでインカム収入を得ることができます。
このサービスを提供しているのはSBI証券だけなので、とてもユニークです。しかも貸株をしている期間中も所有している株に対する配当金を受け取ることができるため、利用しない手はないようなサービスです。

楽天証券
楽天グループは国内最大級のオンラインショッピングモールである楽天市場を筆頭に、楽天モバイルや楽天銀行、楽天トラベルなど幅広い事業を手がけています。これらの楽天系サービスは「楽天経済圏」と呼ばれ、楽天証券で獲得したポイントをオトクに利用できることが強みです。
①幅広いアメリカ株式銘柄を取り扱う
アメリカ株の取扱銘柄数がとても多いことは、楽天証券の1つめのメリットです。有力なネット証券5社の中では2番目に多い取扱数で、5,000銘柄近い選択肢から投資先を選ぶことができます(2022年1月現在)。
②業界最安値の格安手数料
ネット証券各社は手数料で競い合っており、楽天証券はその中で常に業界最安値の手数料体系を維持しています。これは日本株だけでなくアメリカ株にもいえることで、楽天証券がアメリカ株にかなり力を入れていることをうかがい知ることができます。
また、楽天証券では取引手数料の1%がポイントバックされるため、ためたポイントは「楽天経済圏」で現金と同様に活用することができるのでとてもオトクです。
手数料にポイントバックされるというのは、実質的な手数料の値下げです。楽天証券の場合は特にポイントの利用価値が高いので、その点も含めて価格比較をするべきでしょう。
③取引ツールや情報コンテンツが充実
日本株においても取引ツールや情報コンテンツの充実度には定評がある楽天証券だけに、その強みはアメリカ株でも発揮されています。パソコン環境だけでなくスマホアプリの開発にも力を入れており、「iSPEED」という独自アプリはとても高機能で使いやすいとの評判を得ています。

もちろんパソコン向けに用意されている取引ツール「MARKETSPEED」も秀逸で、WindowsだけでなくmacOS版も用意されています。

楽天証券はIT企業グループでもあるので、こうした取引ツールの開発力は他社より秀でている部分があります。これらのツールを生かして積極的に情報コンテンツも配信しているため、投資家は楽天証券の取引ツールさえあればひと通りの機能や情報が十分そろいます。
DMM株
アメリカ株の取扱銘柄数は若干少なめで「これから」の印象があるDMM株ですが、取引手数料が無料であることは大いに目を引きます。DMMグループは他にも日本株やFX、仮想通貨などの取引サービスを提供しているので取引アプリの開発力やサービスの充実度など、とてもバランスの取れた証券会社だといえます。
①取引手数料が0円
ネット証券各社は手数料で激しい競争を繰り広げていますが、おおむね主要なネット証券は約定代金に対して0.495%としているところが多く、0ドルになるには株価が一定額以下であることが条件です。
しかし、DMM株は条件に関係なく一律で取引手数料が無料です。これはとても画期的なことで、株価が高い銘柄を売買するほどその威力は大きくなります。DMM株としてもこれは強調したいメリットだと思うので、公式サイトでも「約定代金にかかわらず」であることが明記されています。
【DMM 株】では、米国株式の取引手数料は、約定代金にかかわらず一律0円。
引用元:DMM株「株式取引の手数料」
②アメリカ株式を信用取引の担保にできる
DMM株では、信用取引の際に必要になる担保として日本株だけでなくアメリカ株も活用できます。前々営業日の最終価格に対して60%を掛け目として利用できるため、株価が高い銘柄であれば担保力も大きくなります。しかもアメリカ株は長らく右肩上がりの成長を続けているため、信用取引の担保価値もそれにつれて高くなっていきます。
信用取引
現金や株式、投資信託を担保として証券会社に預けることにより証券会社からお金や売買に必要な株式を借りて行う取引。
中長期的に保有する予定のアメリカ株を短期投資の有効な手段である信用取引に生かすことができるのはDMM株がネット証券では初なので、株式投資のスタンスによってはとてもメリットが大きくなる人もいるでしょう。

③アメリカ株初心者にもうれしい投資情報を配信
DMM株は投資家向けの情報配信にも力を入れています。とかく情報が少ないといわれることが多いアメリカ株だけに、アメリカのダウ・ジョーンズ社が発行している投資週刊誌「バロンズ」のダイジェスト版が日本語で配信されるのはとても有益です。
マネックス証券

アメリカ株が今ほど人気を集める前からアメリカ株の取り扱いに力を入れてきたマネックス証券。それだけに現在も業界最高水準のサービス内容と最低水準の手数料体系は秀逸で、これからアメリカ株を始めようと考えている初心者にとって有力な選択肢となるはずです。
確定申告など税金との関わりが煩わしいと思う投資家は多いですが、マネックス証券はアメリカ株取引であっても特定口座に対応しているので、税金に関する煩わしさからも解放されます。
特定口座
特定口座とは、申告分離課税が適用になる上場株式等の譲渡益課税について、証券会社が投資家の代わりに損益の計算を行い、「特定口座年間取引報告書」を交付する制度です。投資家の選択により、証券会社が納税し、投資家は確定申告不要とすることも可能です。
①アメリカ株の取扱銘柄数が4,500以上
マネックス証券のアメリカ株取扱銘柄数はすでに4,500を超えており、業界トップクラスです。全部で約6,000あるアメリカ株のうち大半を網羅しているので、これだけあれば投資したい銘柄がほぼ見つかるはずです。
早い時期からアメリカ株の取扱銘柄数を増やしてきたマネックス証券だけに、上場して間もない話題の銘柄も積極的に組み入れています。
②最低水準の手数料
手数料体系においてもマネックス証券は業界最低水準です。マネックス証券を利用していれば常に他社と比べてもそん色のない業界最低水準であると考えて問題ないでしょう。
株価によっては取引手数料が0ドルになるサービスもあるため、これも他社と比べて引けをとりません。
③特定口座にも対応している
投資で得た利益を確定申告するのは面倒だと感じる人は多く、多くの証券会社はそのために特定口座を用意しています。特定口座だと源泉徴収で納税ができるため確定申告の必要がなく、毎年2月になったら書類をそろえて申告をするといった手間がありません。
マネックス証券の特定口座はアメリカ株にも対応しているため、アメリカ株で発生した利益についても確定申告することなく源泉徴収で納税することができます。確定申告は毎年のことなので、それが不要になる便利さは一度利用すると一般口座を利用できなくなるほどです。
PayPay証券

PayPayというのはキャッシュレス決済で有名なブランドですが、そのPayPayを手がけるソフトバンクを中心とする企業が出資して誕生したのが前身となるOne Tap Buyというスマートフォン向け証券会社です。これが社名変更してPayPayブランドに統一されたことで、現在のPayPay証券となりました。
特徴は前身のOne Tap Buyを踏襲しており、ユニークなサービスが多いネット証券です。
スマートフォンだけで取引ができる
PayPay証券は前身であるOne Tap Buyの当時から提供しているスマートフォン向けサービスが特徴的です。1,000円から購入できる手軽さやスマートフォンだけでアメリカ株の売買を完結できることは話題を呼び、アメリカで大流行した「ロビンフッド」という株式投資アプリをほうふつとさせるものです。

銘柄を指定する、金額を指定する、そして「買う」のボタンをタップするだけというとてもシンプルな操作性も魅力で、これならアメリカ株のみならず株式投資が初めての方であってもまず操作に困ることはないでしょう。
個別株の選択に迷った人のために、アメリカ株全体の値動きと連動する株価指数のETFを選択できるようになっており、これもスマートフォンの操作だけで簡単に売買ができます。
有名企業の株式を1,000円から購入できる
アメリカ株を1株単位で購入できることは、単元株で原則100株単位となる日本株との違いです。しかし1株単位で購入できるからといって、株価が数十万円になるような銘柄だとそれが最低投資額になります。これだとハードルが高いと感じる初心者も多いことを受けて、PayPay証券では銘柄の株価や単元数に関係なく1,000円から購入可能です。
アメリカ株には世界に名だたる有名企業がたくさんありますが、それらの中には株価が高い銘柄も少なくありません。そんな銘柄であってもPayPay証券であれば1,000円から購入して部分的なオーナーになることができるのはユニークです。
例えば日本円で株価が1万円の銘柄を1,000円分購入する場合、0.1株を保有することになります。この方法であればどんなに株価が高い銘柄であっても株を購入できるので、投資の門戸が大きく広がります。
厳選された銘柄を提供している
率直に言って、他のネット証券と比べるとPayPay証券のアメリカ株取扱銘柄数は多いとはいえません。しかしサービス開始当初と比べると増えているのは確かであり、まだサービス開始から間もないこともあって銘柄数が少ないだけなのかもしれません。
それでは取扱銘柄に不足があるかというと、決してそんなことはありません。多くの日本人投資家が対象とする銘柄はしっかりと網羅しているので、厳選した銘柄を取り扱うことを優先していると考えるのが妥当でしょう。
アメリカ株の銘柄を選ぶポイント
多くのネット証券で数千銘柄の取り扱いがあるアメリカ株から、自分が投資するべき銘柄を選ぶのは簡単なことではありません。そこで実際にアメリカ株投資を始めるのに当たって銘柄を見極めるポイントを解説します。
- 流動性は高いか
- 株価は安定しているか
- その銘柄に将来性はあるか
- 割高過ぎではないか
①流動性は高いか
流動性とは金融資産がどれだけ活発に売買されているかを示す価値です。流動性が高ければ希望どおりの価格と数量で売買を成立させやすいですし、それだけの取引があるということは人気銘柄である可能性も高いでしょう。
流動性が高いことはアメリカ株そのものの魅力の1つなので、その中でも流動性が高い銘柄は投資価値が十分にあると判断できます。そこで1つめに注目したいのは、その銘柄の流動性です。
それぞれの銘柄の売買高を見ることができるので、他の銘柄と比べて極端に売買高が少ないと流動性も低い可能性があります。そういった銘柄は避けて、売買高が十分にある銘柄から選ぶのがよいでしょう。
② 株価は安定しているか
株式投資で重要なのは、価格の安定性です。上場まもない銘柄の株価が一気に上昇し、その後暴落するといった乱高下を見せることがありますが、こうした銘柄はまだ値動きが荒く初心者向きとはいえません。
株価が安定していてゆっくりと右肩上がりの上昇をしているのが理想的なので、その条件を満たす銘柄、それに近い値動きをしている銘柄に投資するのが無難です。値動きが荒い銘柄は大きな利益を上げるチャンスがある一方で大損のリスクと隣り合わせです。
アメリカ株には長期的に緩やかな右肩上がりのチャート形状になっている銘柄が数多くあるので、そういった銘柄から始めてみるのがよいのではないでしょうか。
③ その銘柄に将来性はあるか
株式投資の世界には、「Buy the rumor, sell the fact」という格言めいた言葉があります。日本語に訳すと「うわさで買って事実で売れ」との意味合いになり、まだ事実になっていない未来についての材料が株価に大きく影響を及ぼす特性を如実に表しています。
銘柄についての将来性は、未来の話です。今からその未来を完全に予測することは不可能ですが、将来に向けてその企業が業績をしっかり上げられるか、その環境があるかどうかはある程度の予測ができます。その予測に立ち、将来も株価を上昇させるだけの経営環境を維持できるかどうかの将来性をしっかり精査しましょう。
④ 割高過ぎではないか
長らく右肩上がりの上昇を続けてきたアメリカ株には、幾度となく「すでにバブルである」との指摘がなされてきました。これが正しいかどうかを正確に判断することは誰にもできませんが、高値圏で推移している銘柄は多いので割高感があることは確かです。
市場全体が右肩上がりなので割高感があることは仕方ないと思いますが、その中でも突出して割高になっている銘柄は要注意です。テクニカル指標にRSIというチャート分析ツールがあるのですが、日足チャートでこれが80や90を超えているような銘柄はテクニカル的に割高感があるため、買われにくくなる傾向があります。
アメリカ株のおすすめ銘柄5選
数千もある銘柄の中で、投資するべき銘柄をどう選ぶか?特に初心者の方はその疑問に当たりやすいと思います。そこでアメリカ株のおすすめ5選として、定番ともいえる銘柄を5つピックアップして紹介します。
ここに紹介する銘柄は伝統的な銘柄ばかりでベンチャー企業のような「大化け」はないかもしれませんが、その一方で株価に安定性があるため、初心者におすすめと考えられます。
- AT&T(T)
- エクソン・モービル(XOM)
- フィリップ・モリス・インターナショナル(PM)
- シェブロン(CVX)
- アイビーエム(IBM)
AT&T(T)
アメリカの通信大手です。名称も日本のNTTと似ており、日本におけるNTTと同様の立ち位置にある企業です。日本のNTTと同様に激しい競争にさらされていますが依然として強さを維持しており、高配当銘柄としても知られています。
36年間続いた連続増配銘柄だったのですが、その連続記録はすでにストップしてしまいました。しかしアメリカ通信界のモンスター企業であることに変わりはなく、堅調さを維持できれば株価が再び成長軌道に乗ることも考えられます。
エクソン・モービル(XOM)
日本ではガソリンスタンドでおなじみの石油関連企業です。日本ではガソリンスタンドのイメージが強いですが、エクソン・モービルは世界最大級のエネルギー企業で、石油化学製品メーカーやエネルギーの採掘などさまざまな事業を有しています。
エネルギーの需要がある限り「出番」のある企業なので、アメリカの景気拡大によって株価の上昇が見込まれます。
フィリップ・モリス・インターナショナル(PM)
「フィリップ・モリス」というブランドで日本でもたばこが販売されているので、喫煙者にはなじみのある企業です。アメリカでたばこ事業を手がけている大手ですが、折からの禁煙意識の高まりによって不人気株と見なされることで株価も低迷を余儀なくされますが、依然として喫煙者は多く堅調な事業推移から安定した配当利回りが人気です。
シェブロン(CVX)
先ほど紹介したエクソン・モービルと同じくアメリカの石油関連企業です。いわゆるスーパーメジャーに分類される大手なので、原油需要や価格によって株価が大きく影響を受ける特徴があります。
アフターコロナを見越した原油高はシェブロンの株価上昇にも影響を及ぼしており、アメリカの景気拡大とそれに伴う原油需要増で株価の上昇が期待できます。
アイビーエム(IBM)
かつてはパソコンなどコンピューター機器の世界的メーカーとして名をはせた老舗企業で、現在はITコンサルティングやシステム運用などを主力事業としています。
ITというとナスダックに上場しているGAFAMのような派手な銘柄に目を奪われがちでアイビーエムは不人気であることが否めませんが、株価の安さゆえに配当利回りは高く、中長期的な投資対象としては安定感があります。
コロナ禍でアメリカ株を始める方に人気の銘柄11選
コロナ禍によってアメリカの株式市場は一時期大きく落ち込み、そして復活を遂げました。コロナ禍では新たな人気銘柄が多数誕生したので、ここではコロナ禍を意識した銘柄選びのヒントとして以下の11銘柄を紹介します。
- GAFAM
- グーグル(アルファベット)
- アップル
- フェイスブック(メタ)
- アマゾン
- マイクロソフト
- ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ
- テスラ
- アドビ
- ペプシコ
- プロクター・アンド・ギャンブル
- キンバリー・クラーク
GAFAM
世界的なIT巨人と呼ばれる企業群を、それぞれの企業名の頭文字を並べてGAFAMと表現することがあります。Google、Apple、Facebook、Amazon、そしてMicrosoftの5社ですが、これらはいずれも日本でもおなじみの企業です。
これらの企業はそれぞれ核となる商品やサービスを持っており、それがグローバルに支持されていることから大きな利益を上げています。その盤石性に加えて新たなビジネスにも積極的に参入しているので、将来性も抜群です。
グーグル(アルファベット)
グーグルというのは検索エンジンをはじめとするサービス名で、運営会社の社名は「アルファベット」です。検索エンジンの「Google」はもちろんのこと、動画配信サイトの「YouTube」、地図アプリの「Googleマップ」、無料メールの「Gmail」、さらにはスマートフォンのOSであるAndroidの開発と提供など、私たちの日常生活を支えているサービスがめじろ押しです。
こうしたサービスが世界中のユーザーの日常生活やビジネスに深く浸透することでグーグル(アルファベット)の事業は盤石となり、そこから得られた潤沢な資金から新たな事業への活発な投資につながっています。
グーグル(アルファベット)は、これだけの好業績を続けていながら配当金を出していません。その分を次なる投資に回しているため、今後の企業価値向上を見越して株価上昇による利益を狙うことになります。
アップル
アップルといえば世界的な大ヒット機種となっているスマートフォン「iPhone」のメーカーとして知られていますが、それ以外にもMacBookなどのパソコン、オーディオ関連のプレイヤーやイヤホンなど多岐にわたります。
かつてはマッキントッシュと呼ばれるパソコンのメーカーとして知られ、それが現在のmacへと受け継がれています。MicrosoftによるWindows陣営と対極にあるパソコンの陣営を築き上げてきました。
2022年1月には、アップルの時価総額が3兆ドルを達成しました。iPhoneの世界的な普及や多くの製品やサービスがグローバルに支持されていることに加えて、アップルは自社買いにも積極的であるため、このことも株価を押し上げる要因となっています。
フェイスブック(メタ)
大学在学中に現在のFacebookとなるSNSを立ち上げ、その大成功によってGAFAMの一角をなす企業を育て上げたマーク・ザッカーバーグCEOによるITガリバー企業です。ザッカーバーグ氏の成功秘話は「ソーシャル・ネットワーク」という映画にもなり、常に注目を集め続ける人物です。
GAFAMの中では「F」がFacebookの頭文字となりますが、すでに同社は2021年10月に社名をMeta(メタ)に変更しており、現在は社名ではありません。社名をMetaに変更した理由は急成長を続けるメタバースへの本格参入で、同社は今後SNSだけでなくメタバースの世界でイニシアチブを目指していくとアナウンスしています。
つまり、今後のフェイスブック(メタ)の株価を占うのはメタバースのさらなる普及と成長、そして同社が占める位置でしょう。
アマゾン
オンラインショッピングモールの世界的な大手、「Amazon」を運営する企業です。経営者のジェフ・ベゾス氏はアマゾンの社長であること以外にも名前に挙がることが多く、2021年7月には自信が保有する宇宙開発企業のロケットに乗って宇宙旅行に成功したことでも話題になりました。
アマゾンの株価を大きく押し上げた要因に、コロナ禍があると指摘されています。コロナ禍によって外出自粛を余儀なくされた人たちがネットショッピングで多くの消費をした結果、アマゾンに多大な利益をもたらすという構図です。
GAFAMの一角としての存在感も十分で、アマゾンが上場しているナスダック市場でも時価総額ランキングでは常に上位の常連です。株価が大きく下落しても戻すパターンが続いており、その安定性から中長期保有にも耐えうるでしょう。
マイクロソフト
Windowsが誕生する前からMS-DOSというパソコンのOS(基本ソフト)開発を手がけ、現在のWindows陣営の基礎を築いてきた老舗企業です。創業者のビル・ゲイツ氏はすでに経営の第一線から退いていますが、同氏の発言は今も注目を集めやすく「元祖IT巨人の経営者」との印象もあります。
自社による製品の開発だけでなく、マイクロソフトは活発なM&A戦略でも知られています。有名な企業としては無料ビデオ通話ソフト開発のSkype、メールサービスのHotmail、さらには携帯電話メーカーのNokiaなどがあります。さらに2022年にはアメリカの大手ゲーム会社であるActivision Blizzardを8兆円近い金額で買収し、これによってマイクロソフトはゲーム業界でも上位企業となりました。
潤沢な資金による有力企業の買収は今後も続くと見られ、マイクロソフト全体の成長は今後も堅調に推移するでしょう。
ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ
コロナ禍は多くの企業にリモートワークが普及する契機にもなりましたが、そこで用いられるビデオ会議ツールに「Zoom」があります。ズーム・ビデオ・コミュニケーションズはこの「Zoom」を開発した企業として注目され、注目度の上昇が株価上昇にも寄与しました。
リモート会議そのものが「Zoom会議」と呼ばれることもあるほど知名度が高く、コロナ禍で一気に知名度と存在感を高めた企業の1つといってよいでしょう。
コロナ禍が収束しても一定比率でリモートワークが導入され続けると考えられ、ズーム・ビデオ・コミュニケーションズの役割は引き続き大きいと思われます。ただし成長余地が大きい分野だけにマイクロソフトの「Teams」など競合も参入しており、「リモート会議といえばZoom」というブランド力を維持しつつ新しいサービスを展開していけるかがポイントになるでしょう。
テスラ
テスラはアメリカの大手EV(電気自動車)メーカーです。テスラの社名も高い知名度を有していますが、テスラの経営者であるイーロン・マスク氏も社名に負けない知名度と話題性を有しています。
会社としてのテスラは、2022年1月現在EVメーカーとして世界トップのシェアを誇っています。SDGsをはじめとする環境意識の高まりにより、世界はEVシフトが進んでいます。テスラはその中の中心的な存在と目されており、EVシフトが進めば進むほどテスラ株にも追い風が吹くと考えられます。
もう1つテスラ株の動向に大きな影響を与えるのが、イーロン・マスク氏の言動です。同氏の発言はテスラ株だけでなくさまざまな金融市場に影響を与えており、暗号資産(仮想通貨)についてポジティブな発言をすると高騰、逆にネガティブな発言をすると暴落といったことも起きました。
今後もテスラ株は同氏の発言による影響を受ける可能性は高く、企業の動向とともに「マスク砲」にも注目です。
アドビ
アドビは、クリエイター向けのレイアウトや編集ソフトなどを開発、製造しているソフトメーカーです。「イラストレーター」「フォトショップ」といったソフトは世界的に普及しており、出版や編集の分野で活躍しています。
最近ではYouTuberなどの台頭によって動画編集の需要が高まっており、アドビの「プレミア」がヒット商品となっています。今後もさらにクリエイターからのニーズはすそ野が広がっていくと考えられ、これがアドビの株価にとって追い風になるでしょう。
すでにかなり普及しているため知らない人も多いですが、デジタル文書の規格になっているPDFもアドビが開発したもので、今や書類を保存したり受け渡したりする際の定番になっています。
すでに普及しているソフトやサービスと高い知名度は、今後もアドビの株価を堅調に推移させる要因となります。
ペプシコ
ペプシコは日本では「ペプシコーラ」のブランドで知られる飲料や食品のメーカーです。同じコーラ飲料の市場ではコカ・コーラが圧倒的なブランド力を有しているため売り上げを見ても大きな差がありますが、会社全体ではスイスのネスレに次ぐ世界第2位の飲料・食品メーカーです。
ペプシというとペプシコーラのイメージが強いですが、ペプシコには「フリトレー」ブランドのスナック菓子をはじめとする多くのブランドがあります。こうした総合力が強みとなり、ペプシコは世界的なメーカーとして長らく君臨しています。
コロナ禍による外出の減少では、家で食べられる食べ物や飲み物の消費が伸びました。コーラなどの飲料だけでなくスナック菓子などの需要も伸びたため、ペプシコはコロナショックによる影響をあまり受けず一度は急落した株価もすぐに回復しています。この堅調さが中長期的な投資向きといえます。
プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)
プロクター・アンド・ギャンブルという社名よりも、その頭文字から生まれたブランド名である「P&G」のほうが日本ではおなじみの企業です。石鹸や洗剤をはじめとする生活用品メーカーとしては世界最大の規模を誇り、「パンパース」や「ファブリーズ」「アリエール」などの製品名は使ったことや見聞きしたことがあるのではないでしょうか。
コロナ禍によって世界的に衛生に対する関心が高まり、石鹸や洗剤などの衛生用品に対する需要が急増、プロクター・アンド・ギャンブルにも恩恵がもたらされました。
配当性向が高いアメリカ企業を象徴するように、プロクター・アンド・ギャンブルも連続増配を続けています。2022年時点では65年にわたる連続増配を継続中で、配当狙いの投資家にも魅力的です。
キンバリー・クラーク
上記のP&Gと並ぶアメリカの生活消費財メーカーの大手です。数あるブランドの中で、日本ではティッシュペーパーの「クリネックス」が有名です。企業規模や売り上げなどにおいてP&Gに及びませんが、知名度の高いブランドを有していることから業績が堅調で、株価の安定性にも魅力があります。
コロナ禍では衛生用品の需要が急増したため、ティッシュペーパーなど衛生用途の紙製品を多く手がけているキンバリー・クラークにとっても追い風となりました。その恩恵もあってコロナショックによる影響も軽微でした。
P&Gと比べると新興国での浸透がまだまだ進んでいないとの指摘もあり、今後こういった市場で知名度とブランド力が向上すれば大きく成長する余地があります。
アメリカ株取引で気をつけたいポイント
アメリカ株投資を始めるのに当たって、注意するべきポイントをまとめました。ここで解説するのはデメリットやリスクではなく、注意点です。
- 決算書はチェックする
- サーキットブレーカーに注意する
- 課税の仕組みを理解しておく
- 円貨決済と外貨決済の違いを理解する
① 決算書はチェックする
企業の決算書は公開情報なので、誰でも簡単に閲覧することができます。難しいイメージがある書類なので敬遠してしまいがちですが、決算書は企業の成績表のようなものなので、決算書を見ずに株式投資をするのはリスクが高いです。
決算書そのものを見るのはアメリカ企業だけに英語でしか公開されていないことも多く、それが難しく感じるのであれば、ネット上にある決算書の解説記事を読むことでも同じ効果が得られます。
アメリカ企業は株主を重視する風土があるので、決算書はとても厳格に運用されています。虚偽の内容が記載することには極めて高いリスクが付きまといますし、株主も決算書類を入念に精査しているのでつじつまが合わないようなことはすぐに発覚してしまいます。
ここまで厳格なルールのもとで公開されている情報なので、決算書を通じて企業の経営状態を正確に知ることができます。
決算書でチェックするポイント
決算書で重視したい項目はいくつかありますが、その中でもチェックしておきたいのはROEです。ROEとは「Return On Equity」の略で、日本語では自己資本利益率もしくは株主資本利益率と訳されています。
ROEを見ることにより、資本をどれだけ効率的に活用して利益を出しているかが分かります。ただしあくまでも表面上の利益率であり、借入金が増えてもROEが向上してしまうので、それによる誤解を防ぐためには決算書の自己資本比率と有利子負債比率をチェックする必要があります。
これらを総合的に判断することにより、その企業の経営力や不景気になったときの耐性などが分かります。
② サーキットブレーカーに注意する
サーキットブレーカーとは、金融市場で大きな値動きが起きたときにその行き過ぎを鎮めるために一時的に取引が停止になる仕組みのことです。アメリカの株式市場には日本のようにストップ高やストップ安の制度がないため、相場で暴落が起きたときにはサーキットブレーカーを発動することによって相場の動きをいったんクールダウンさせるようになっています。
サーキットブレーカーには、3つのレベルがあります。それぞれ、以下のとおりです。
レベル | 発動条件 | 停止時間 |
レベル1 | 現地取引時間 9時30分~15時25分 S&P500が前日の終値から7%下落 |
15分間 |
レベル2 | 現地取引時間 9時30分~15時25分 S&P500が前日の終値から13%下落 |
15分間 |
レベル3 | 現地取引時間中 S&P500が前日の終値から20%下落 |
終日 |
サーキットブレーカーが発動すると日本の証券会社から出している注文も停止になるので、取引停止中は注文が成立することはありません。どのレベルも株価暴落時に発動されるので、アメリカ株は暴落すると売りたくても売れなくなることがあると覚えておきましょう。
サーキットブレーカーとは?
アメリカの株式市場で暴落が起きたときに発動されるクールダウンのための仕組みです。取引時間中であってもサーキットブレーカーが発動すると注文が成立しないので、特に暴落時に売ろうと思っても売れないことがあるのは注意が必要でしょう。
もっとも、アメリカ株は過去に暴落が起きてもそのあとで回復してきているので、売れなかったとしても回復を待つのも1つの戦略です。
③ 課税の仕組みを理解しておく
株式投資で利益が出ると課税されることは日本とアメリカどちらも同じですが、アメリカ株で利益が出ると両方の国で税金との関わりが生じるので、これをしっかり理解しておく必要があります。
重要なのは、3点です。日本とアメリカでは株式投資による利益の取り扱いが異なること、そして日本とアメリカの両方で税金との関わりが生じること、そして放置していると二重課税になってしまうものの外国税額控除を適用することで問題を回避できることです。
これらを理解しておかないとせっかくアメリカ株で利益を出しても多く課税されてしまいますし、逆に日本での納税をせずに放置していると大きな問題になってしまいます。
配当益の二重課税
アメリカ株は配当の高さが魅力ですが、その配当益にはアメリカでまず10%、そして日本で20.315%課税されます。つまり両国で二重課税状態になります。合計すると30%以上の税率になるので、これはかなり高いと感じるでしょう。
保有しているアメリカ株の配当金はその株を購入した証券会社の口座に入金されますが、入金された時点でアメリカの10%、日本の20.315%が徴収されています。
入金額を見て「実際の配当金より少ない」と感じたとしたら、それは税金が徴収されたあとだからです。
外国税額控除で二重課税を回避する
アメリカ株の二重課税は、外国税額控除を適用することで回避できます。こちらは、国税庁が示している外国税額控除の概要です。
居住者が、その年において外国の法令により所得税に相当する租税(以下「外国所得税」といいます。)を納付することとなる場合には、次の算式(1)で計算した金額(以下「所得税の控除限度額」といいます。)を限度として、その外国所得税額をその年分の所得税額から差し引くことができます。
引用元:国税庁「居住者に係る外国税額控除」
(1)所得税の控除限度額=その年分の所得税額×(その年分の調整国外所得金額/その年分の所得総額)
これを分かりやすく言い換えると、「外国で徴収された税金は控除され、実質的に日本で課税される20.315%のみになる」となります。確定申告をすれば適用され、アメリカで課税された分は還付されます。
何もしなければ税率が30%以上のままで税金の払い過ぎになってしまうので、配当金を受け取った場合はしっかりと確定申告をして外国税額控除の適用を受けましょう。
④ 円貨決済と外貨決済の違いを理解する
アメリカ株投資をすると、アメリカのドルと日本の円という2つの通貨と関わりを持つことになります。この違いを理解しておかないと思わぬ損をしてしまうことがあるので、両者の違いと、どちらがよいのかをしっかり押さえておきましょう。
円貨決済とは
円貨決済とは、アメリカ株を日本円で決済することです。厳密にいうと株の購入時には円からドルへの両替を行い、そのドルで株を購入しています。逆に売却時にはアメリカの現地で株を売ってドルを受け取ったうえで日本円に両替する処理を行っています。
複雑な処理をしているように見えますが、投資家は円貨決済を選択するだけで上記の処理は証券会社が自動的に行ってくれます。
投資家は日本円を用意すればアメリカ株の投資ができるので、多くの場合初めてアメリカ株を購入する方は円貨決済から始めることになるでしょう。
外貨決済とは
株の売買を現地の通貨で行うことを、外貨決済といいます。アメリカ株の場合、アメリカの通貨であるドルで決済をします。株の売買時に為替取引をしないので、多くの証券会社が設定している25銭のスプレッド(実質的な手数料です)を負担せずに取引ができます。
しかし外貨決済をするには、最初から外貨を保有している必要があります。銀行で両替をして証券会社の口座に入金するなどの方法で外貨を調達するか、すでにアメリカ株投資をしている人は株の配当金や売却時に受け取ったドルを次の投資に使うなどのパターンが考えられます。
円貨決済と外貨決済、どちらのほうがよい?
円貨決済と外貨決済には、それぞれメリットとデメリットがあります。円貨決済のメリットは手持ちの日本円を使って今すぐアメリカ株投資を始められる手軽さと、日本円のほうがどれだけ投資をしていいて損益はどうなっているのかといった投資状況を把握しやすいことが挙げられます。
しかし円貨決済の場合は取引のたびに為替手数料としてスプレッドの25銭を負担する必要があり、回数が多くなると大きな金額になってしまいます。
それに対して外貨決済は為替のコストを考慮する必要がないので低コストですが、最初にドルを調達する必要があります。
結論としては新たに投資をする分は円貨決済が手軽でよいと思いますが、アメリカ株投資で得た売却益や配当金は全て外貨決済にしてドルベースで投資をするのがベターです。
最終的に日本円に替える必要があるときまではドルで売買を行い、資産形成をしていくのがよいでしょう。
初心者におすすめの投資スタイル
アメリカ株に限らず、株式投資には大きく分けて2つのスタイルがあります。この両者はいずれも初心者が取り組みやすいので、ぜひマスターしてください。
- グロース投資 - 成長企業に投資
- バリュー投資 - 割安銘柄に投資
グロース投資 - 成長企業に投資
アメリカには成長力や将来性が豊かな企業がたくさんあります。こうした企業が成長する前に株を購入し、その企業が成長することによって株価が上昇することに期待するのがグロース投資です。
今ではすでに株価が高くなっている大手企業の中にはかつて株価がとても安かった企業も少なくありません。そういった銘柄を保有して株価が大きく成長することによって資産を増やすのはアメリカ株の醍醐味といえます。
バリュー投資 - 割安銘柄に投資
グロース投資と違ってバリュー投資は、株価が過小評価されている割安の銘柄を探し、その銘柄の株価が本来の水準に戻ることを期待する投資スタイルです。
アメリカ株は一度暴落してもいずれ回復基調に戻るというパターンを長期間続けているので、今は株価が割安な銘柄であってもいずれ戻るのではないかとの推測を立てる投資家が多く、こうした投資家が株を買うことで株価が上昇しやすくなります。
割安になっていてもいずれ本来の株価に戻るという推測が成り立ちやすいのもアメリカ株の特徴です。社歴が長い老舗企業や、コロナ禍によって一時的にダメージを受けている企業などで株価が割安になっているものが多いので、これらの銘柄を物色してみると面白いかもしれません。
アメリカ株投資を始めてみよう
成長性や手厚い配当金などに魅力を感じてアメリカ株投資を検討している方に必要な情報を網羅しました。少額から始めればリスクも小さいので、まずは1株単位で好みの銘柄を買ってみることから始めてみてはいかがでしょうか。
アメリカ株投資に関するよくある質問
アメリカ株投資を始めるにあたって、よくある質問をまとめました。
- アメリカ株投資はなぜ人気?
- アメリカ株の注意点は?
- アメリカ株はどのような人におすすめ?
- アメリカ株を買うにはいくら必要?
- アメリカ株の取引可能時間は?
- 税金は日本とは異なる?
- 為替差益が出たら確定申告は必要か?
- NISAでアメリカ株は買えるのか?
- アメリカ株の最低取引単位は?
アメリカ株投資はなぜ人気?
世界的な知名度を誇るグローバル企業や、成長余地が大きい企業がとても多く、長期間にわたって株価が右肩上がりの成長を続けてきたことは投資家にとって魅力であり、安心感があります。
また、アメリカには株主を重視する風土があるので、利益が出るとしっかり配当で還元したり、積極的な投資で株価が上昇するような戦略を打ち出したりするなど、株主の利益を考えた経営をする傾向が強いのも人気の理由でしょう。
日本の証券会社からも手軽に購入できるようになった環境整備も、アメリカ株人気に拍車をかけています。
アメリカ株の注意点は?
アメリカは日本よりも「投資は自己責任」という考え方が強い国なので、日本にあるようなストップ高、ストップ安といった制度がありません。株価が一方的に動き始めるとそれが予想もしないような動きに発展することも珍しくありません。
そのため、アメリカ株投資では自分自身でリスク管理をしっかり行う必要があります。初心者は少額から始めて慣れてきたら少しずつ投資額を増やしていく慎重さが必要でしょう。
また、アメリカ株はドルベースで取引されているため、為替手数料や為替リスクを考慮する必要があります。円高のときにドルを調達して株を買って円安になれば為替による利益も得られますが、その逆の場合は株の利益が為替コストによって目減りしてしまうこともあります。
アメリカ株はどのような人におすすめ?
少額から始めたい人や投資先の多様化を考えている人にはアメリカ株が適しています。また、アメリカ株は長期的に右肩上がりの成長を続けてきているので、短期目線ではなく中長期的な目線で投資をしたい人にとっても魅力的な市場でしょう。
日本株や日本国内の投資先だけではリスクを分散できないので、投資のリスク分散の一環でアメリカ株投資をしている人はとても多くいます。逆にアメリカ株だけに集中投資をするのもリスクが高いので、異なる国や市場に分散して投資をするのが理想的です。
アメリカ株を買うにはいくら必要?
アメリカ株は1株単位で購入できるので、株価が5ドルの銘柄であれば1,000円未満で購入することもできます。GAFAMなど知名度が高い銘柄であっても数十万円あれば購入できるので、多くの方が想像しているほど敷居が高いわけではありません。
アメリカ株の取引可能時間は?
アメリカの主要な市場であるニューヨーク証券取引所とナスダックの取引時間は現地の9時30分から16時までです。日本時間では23時30分から翌朝の6時までとなります。
なお、アメリカにはサマータイム制度があります。毎年3月の第2日曜日から11月の第1日曜日まではサマータイムとなり、取引開始と終了の時刻が1時間ずつ早まります。
税金は日本とは異なる?
投資に対する考え方が日本とアメリカとでは異なるので、アメリカ株で得た利益に対する税金の仕組みも日本とは異なります。
面白いのは、日本と違って株の売却益に対する税金がないことです。日本では20.315%が課税されますので、合計の税率は日本の20.315%だけです。
もう1つの収入源である株の配当金に対してはアメリカで10%、日本で20.315%の税金がかかります。合計すると30%以上の税率になりますが、確定申告をすることによって外国税額控除の適用を受けられるため、アメリカでの課税分は還付されます。
為替差益が出たら確定申告は必要か?
アメリカ株投資は為替取引を伴うことがあるため、為替による利益が出ることもあります。円高のときにドルに両替をして株を買い、その株を売って得たドルを円安のときに円転すると為替差益が発生します。
こうして発生した為替差益は雑所得に分類され、他の所得がある人はそれに上乗せする形で課税されます。給与所得者の場合は年間20万円までは確定申告の義務はありませんが、年間でそれを超える為替差益が出ている場合は確定申告が必要です。
NISAでアメリカ株は買えるのか?
NISAは年間120万円まで投資による利益が非課税になる制度です。取引している証券会社がアメリカ株を取り扱っているのであれば、NISAでアメリカ株を購入することができます。もちろん年間120万円までの非課税メリットも得られます。
NISA
毎年120万円の非課税投資枠が設定される少額投資非課税制度。株式・投資信託等の配当・譲渡益等が非課税対象になる。
一般NISAは、株式・投資信託等を年間120万円まで購入でき、最大5年間非課税で保有できます。
引用元:金融庁「NISAとは?」
金融庁が述べているように、一般NISAは年間120万円までの非課税枠を最大5年間適用することができます。つまり、合計600万円分です。
最大でこれだけの税金が浮くことになるので、しっかり活用したいメリットです。
アメリカ株の最低取引単位は?
アメリカ株の最低取引単位は、1株です。日本では単元株といってほとんどの銘柄が100株単位なので、「株価×100」が最低取引単位になります。仮に株価が1万円の銘柄だと100万円からになるので敷居が高いですが、アメリカで株価が100ドルの銘柄を購入するには1万円少々が最低取引単位となります。
最低取引単位が小さいことは初心者が少額から始める場合や、リスク分散の観点から異なる銘柄を分散して保有する場合などに有利なので、これもアメリカ株投資のメリットの1つです。
※本記事で記載の情報は、個別に記載のない限り、2022年1月25日時点でのものになります。証券会社等の口座開設やキャンペーン利用の際には、各社公式ホームページの最新情報をご確認ください。
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