2021年、日本の株式相場は大きく上昇しました。日本の代表的な株価指数である日経平均株価は約30年ぶりに3万円の大台を突破。昨年9月には3万670円のバブル後の最高値を記録しました。しかし、同年11月以降は下落に転じ、2022年7月現在は2万6000円前後で推移しています。今後、日本株はどう動いていくことが予想されるのでしょうか。また、いまは株式投資を始めるのにいいタイミングなのでしょうか。テレビやラジオ、雑誌や新聞など各メディアで引っ張りダコの経済アナリスト、馬渕磨理子さんに見通しをうかがいました。

馬渕磨理子
(画像=馬渕磨理子)

馬渕 磨理子
Mariko Mabuchi
日本金融経済研究所代表理事 / 経済アナリスト

京都大学公共政策大学院の修士課程修了を経て、法人の資産運用を担当。その後、金融メディアのシニアアナリスト、FUNDINNOで日本初のECFアナリストとして政策提言に関わる。2022年に一般社団法人日本金融経済研究所を設立し、代表理事に就任。フジテレビ(LiveNEWSαレギュラー出演)、テレビ東京、日本テレビ、BS朝日、読売テレビ、日経CNBC、プレジデント、ダイヤモンド、Forbes JAPAN、SPA!ほか、ラジオでもレギュラー番組3本を持つなど各方面で活躍中。プレジデントオンラインの執筆記事は、2020年の半年間で累計6,000万PVを突破し、「日本一バズるアナリスト」と呼ばれる。著書に『5万円からでも始められる! 黒字転換2倍株で勝つ投資術』(ダイヤモンド社)、『株・投資ギガトレンド10』(プレジデント社)。大学時代は国際政治学を専攻し、ミス同志社を受賞している。

米国の物価高と金利は要チェック!

——日本株は昨年まで30年ぶりの高値を付けるなど好調でしたが、今年に入っては弱気な相場が続いているように見えます。2022年も半ばが過ぎましたが、今後はどのような展開が予想されますか?

馬渕 日本株についてお話する前に、世界の株式相場に影響力を持つ米国相場の状態を見ておく必要があるでしょう。現在、米国では金融政策を司るFRB(連邦制度準備理事会)が急ピッチで利上げを行っていて、それが相場の下落につながっています。FRBが利上げを急ぐ背景には、「何としてもインフレを抑えたい」という意図があります。

——日本でも、毎日のように商品値上げのニュースが出ていますね。

馬渕 2021年の欧州で起こったエネルギー危機を発端に、原油や天然ガスなどを中心に資源・エネルギー価格が急騰しました。それがインフレの大きな要因になっています。ロシアによるウクライナ侵攻など地政学的な要因も、それに拍車をかけました。米国のCPI(消費者物価指数)は前年比で8%超という高水準の物価上昇が続いていて、このままでは景気が大幅に悪化しかねません。そのため、FRBはまずこの物価高を押さえ込もうと躍起になっているわけです。

——本来、利上げは景気の過熱を抑えるために行われるケースが多いと思いますが、景気拡大が軌道にのる前にそのような急ピッチの利上げを行ってしまうと、景気が後退局面に突入してしまう可能性はないのでしょうか?

馬渕 確かに、そのような懸念は実際に金融市場にも生まれていて、それが株価の下落を加速させた面があります。もちろん、景気後退局面に陥ってしまうのはFRBにとっても本意ではありません。あくまで、目先のインフレを抑制させるために利上げに打って出ているわけです。

過去を振り返ってみると、金融緩和(利下げ)から金融引き締め(利上げ)に転換し、株価が調整局面に突入したとしても、そのままだらだらと相場下落が続くより、金融引き締めに転換後、だいたい2年以内に相場が反発に転じるケースのほうが多いんです。CPIが落ち着くまでは株式市場も厳しい状況が続く可能性はありますが、すでに米国相場は年初から20%以上、下落していますし、やがて反発に転じるのではないかと見ています。まだ個別株に手を出すのは早いかもしれませんが、指数ベースなら買ってもいいのではないでしょうか。

——今後、CPIがどうなるか要チェックということですね。

馬渕 そうですね。現在、米国の政策金利は2022年末に3.4%まで引き上げられると予想されています。怖いのはCPIがなかなか下がらず、この予想が3.4%から上ブレした時。すでに、株式相場は3.4%までの利上げを織り込みつつありますが、この予想が上ブレするとなると、さらなる株価下落が起きるかもしれません。

円安効果”が見直される展開も

——日本の株式相場も米国と同様、少し上がってもまたすぐに下がるというような状況が続いていますが、日本株についてはどのようにお考えですか?

馬渕 米国が利上げに動く中、日銀は「賃金の上昇が伴っていない」として、金融緩和を維持する姿勢を貫いています。そうなると当然、日米の金利差が拡がります。それが急激な円安の大きな要因になっているわけです。経済的な観点では、製造業に携わる企業から「円安は資源輸入国である日本にとって必ずしもプラスではない」との声が上がるなど、現在の円安はあまり歓迎されていません。しかし、金融的な観点では、円安は輸出企業の収益拡大につながるわけですから、素直にそれを評価すべきという考えがあります。

以前から、「ドル/円相場が1円、円安に傾くと、トヨタ自動車の営業利益は400億円増える」と言われていますが、今後は製造業を中心に円安によって収益が拡大し、それが株価に反映される流れが出てくる可能性はあります。

——円安が株価にはプラスに働くという“日本株の常識”が見直される局面がそのうち訪れそうということですね。

馬渕 これは新型コロナの状況と政府の対応次第ではありますが、円安は訪日外国人客の増加にもつながります。そうなると、インバウンド復活を見込んだ動きが出てくる可能性も十分あるでしょう。さらに、円安で日本の株や不動産が割安になることで、海外勢からの投資が増えることも予想されます。

そう考えると、今後は「いいところはいい、悪いところは悪い」という見方が色濃くなってくると思いますね。

——現在は“悪い円安”などと呼ばれていますが、悪いことだけではないのですね。

馬渕 政府(財務省)による為替介入や原発再稼働などによって、ドル/円相場の風向きが一気に変わる可能性はあります。現在の円安はややハイペース過ぎるので、これが落ち着いてくれば、円安メリット株の再評価シナリオも実現が近づくでしょう。

短期目的と長期目的で資金を分けよう

——そうなると、いまは日本株の買い時と言えるかもしれませんね。

馬渕 チャンスといえばチャンスだと思います。ただ、先ほどもお話したように、「いいところはいい、悪いところは悪い」という流れが鮮明になる可能性が高いので、投資する銘柄には十分注意を払うべきでしょう。米国のナスダック市場の急落を背景に、日本でもグロース(高成長)株が大きく売られましたが、政府肝いりのDX(デジタルトランスフォーメーション)関連などで再浮上する銘柄が出てくる可能性はあります。

ただし、グロース株全体が上昇してこないと、そうした銘柄の本格上昇は難しいかも。実際、ナスダック市場が多少反発しても見向きもされない(全く買われない)グロース株が少なくありません。特に、売り上げだけ伸びていて利益がなかなか追いついてこない“増収減益”企業には要注意。グロース株全体が変われる流れのなかでは、売上高の伸びが注目されて人気化する銘柄が続出しましたが、しばらくは利益が伸びていない企業は買われづらい傾向が続くと思います。

——現在の状況を踏まえて、これから投資を始めようとしている人たちが注意すべき点はなんですか?

馬渕 一度にすべての資金をつぎ込まないことです。買うタイミングと買う銘柄をいくつかに分ける、いわゆる「分散投資」を心がけるべきでしょう。これは現在のような弱気相場の時だけでなく、相場が中長期の上昇トレンドに乗っているときでも同じ。そういう意味では、購入することで自動的に投資先の分散を行えるインデックス型の投資信託や株価指数と連動するETF(上場投資信託)に投資するのもアリだと思います。

ただし、高めの信託報酬が設定されている投資信託もあるので注意が必要。同じような中身の投資信託を比較して、売買手数料や信託報酬が比較的安いものを選ぶべきです。積み立てNISA(小額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)といった税制優遇の制度も大いに活用するといいでしょう。ただ、これらは基本的に20年、30年といった長期投資が前提であって、短期的に大きな利益を狙うものではありません。そうした税制優遇制度を活用するのとは別に、少額資金で大きな利益を狙ってみるのも一手です。

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