株式会社船橋総行
二宮 正

1951年7月、東京都出身。2021年10月、令和3年度船橋市ものづくり認定製品グランプリ受賞。同年11月、令和3年度千葉ものづくり認定製品受賞。2022年12月、令和4年度気候変動アクション環境大臣表彰。2023年3月、第48回発明大賞考案功労賞受賞、第28回千葉元気印大賞優秀技術賞受賞。

オフィス用品販売会社が起こしたEV業界の革命とは

株式会社船橋総行は、ボールペン1本からオフィスのリニューアルまで、ビジネスの現場に関わる様々なプロダクトの販売やソリューションを手掛けている。船橋市以外にも千葉市や習志野市、市原市、成田市、鎌ケ谷市に系列の会社を展開しており、まさに「かゆい所に手が届く営業スタイル」を大切にしている会社である。

そして株式会社船橋総行が持っているもう一つの顔。それはEVの充電システム開発事業だ。
世界的なEV・PHEVの普及が著しい昨今、日本は海外諸国に比べ充電設備の普及という面で非常に遅れを取っている。株式会社船橋総行が2017年に開発、特許を取得した「EVロータリーシステム」は、そんなEV普及のボトルネックを打開する画期的な技術であった。

いったいなぜ、オフィス用品を販売している会社が、全くの畑違いであるEVの充電システム事業に携わろうとしたのか。その背景には二宮代表の思い、そして株式会社船橋総行が積み上げてきた「使命」が深く関わっていた。

二代目が見据えていた国内EVの限界と突破口

株式会社船橋総行は1971年1月、二宮代表の父が船橋市湊町で創業した小さな文具店が始まりだった。両親・祖母から自由奔放に育てられた二宮代表は、その後二代目として代表取締役に就任するも、しばらくの間はオフィス用品の販売を事業の主軸に置いていた。

きっかけは突然だった。
ある日、不動産開発の会社に勤めている知人から「他社と差別化が図れる画期的な設備を導入できたらいいのだが…二宮さん、何かアイディアはないだろうか。」と相談を受けたのである。

並大抵の人なら頭を抱える内容だが、二宮代表は違った。今後確実にEVの普及が強まると予測していた二宮代表は、EVに最も重要な設備のひとつである充電システムに着目。「例えば大規模な駐車場でも、効率良く電力が供給できる画期的なEVの充電システム」を構築することができないか、と考えたのだ。

例えば、マンションの敷地内に複数の充電スタンドを設置するという計画を立ててみる。その敷地内でEV1台を充電するのであれば特段問題ないのだが、同時に充電する台数を増やしていくと、1台ごとの充電ペースがだんだんと落ちていく。これはスタンド1台あたりの電力不足によって起こる現象だ。
電力が不足していれば、電力の契約を引き上げたら良い。果たして本当にそうだろうか。電気代の基本料金が高くついてしまうだけでなく、災害や急激な気候変動によって突然な電力不足に襲われる可能性だってある。日本における充電スタンドの普及が広まらない原因は複雑に入り組んでいたのだ。

そこで二宮代表の頭に浮かんだのが、代表自身の自宅にあるコンセントと電源プラグだったという。「長年差し込まれていないコンセントもあれば、プラグを差したまま頻繁に電源をつけたり消したりするコンセントだってある。これは複数台のEVの同時充電にも必ず応用できるはずだと気づきました。」と二宮代表は力強く語る。

しかし、オフィス関連分野に全く相関性のない、EV充電システムの開発という世界に足を踏み入れ、さらに事業化を目指すことは、まさしく冒険の類いであることに違いなかった。
ただ、二宮代表にはすでに見えていたのだ。地球環境に対する政府の方針により、今後自動車のEV化が確実に普及すること。それによって、電力がひっ迫するであろうことを。

「成功は社員のおかげ、失敗は社長である自分の責任。」
新しい事業として取り組んでいくことに、迷いはなかった。

そして創業から46年、株式会社船橋総行は2017年に「EVロータリーシステム」を開発。なんと電力供給切替装置および電力供給システムとして特許を取得したのだ。
二宮代表が開発したEVロータリーシステムは、複数のEVをいくつかのグループに分け、任意に設定した時間で順番に充電することにより、使用電力をコントロールできる。したがって電力を増強せずEV充電スタンドの設置が可能になり、さらに電気の基本料金も抑えることができるというのだ。まさにEV業界における革命と呼ぶに相応しい功績だろう。

EVロータリーシステム

想いを現実に。知事が認めた革新技術

2022年、このEVロータリーシステムは流山市役所の立体駐車場に導入。その後同システムの代理店や千葉県庁の各駐車場にも導入され、運用が始まっている。2025年には千葉県にある大規模集合住宅でも導入が決定しており、二宮代表が見ていた景色は着実に形となってきている。

またその功績が認められ、令和3年度の「千葉ものづくり認定製品」を受賞、熊谷知事とチーバくんから表彰されている。

もちろんEVロータリーシステムの知的財産の保護も怠らない。同システムに関する基本特許を確保しつつ、付随する特許を順次取得し、幾重にも重なる防御態勢を構築している。

そして今後もEVロータリーシステムを社会に認知していただき、多くのお客様に導入してもらうために、また今よりさらにお客様や社会から求められる製品となるために、引き続きバージョンアップを重ねていくという。

千葉を越え、世界のお困りごとを請け負える会社へ

「船橋総行の「総行」は、「すべて行う」という意味なんです。オフィスのなかで必要なものや発生したお困りごとは、すべて請け負わせていただく事を使命としています。」と話す二宮代表のことば通り、これまでに数千社もの取引先から頼りにされてきた株式会社船橋総行。

これからは、少しでもカーボンニュートラルの実現に近づくために、そしてお客様・社員・取引先、地域社会、果ては地球を大切にし、世界のお困りごとをすべて請け負える会社になるために、EVロータリーシステムを全国に広めたい。そう語る二宮代表は、今何を見ているのだろうか。

株式会社船橋総行

本社所在地
千葉県船橋市高瀬町62番2号
設 立
1971年1月7日
資本金
1,500万円
事業内容
文具、オフィス家具、印刷物、OA・ICT機器等オフィス用品の販売、およびEV車充電システムの開発・販売を手掛ける。
企業URL
https://evrotary.jp
代表者
二宮 正