株式会社エフテック
森 道徳

千葉県千葉市出身。2004年、専修大学卒。2006年、千葉県自動車大学校卒、鹿島旭自動車ボデー株式会社に入社。2009年、株式会社エフテックに入社。トラックの車体修理の現場を10年以上勤め、フロント業務、管理業務に携わっている。

物流業界を支える最先端の整備会社

株式会社エフテックは千葉市若葉区に本社整備工場、四街道市に車体工場を構える自動車整備会社だ。乗用車などの一般車両ではなく、荷物や人を運ぶトラックやバスといった業務用の商用車、特殊車両を専門に整備している。

 2020年に竣工された新しい本社整備工場では、大型バスからフルトレーラートラックまでさまざまな車両の整備に対応できるのが特徴で、業界最先端の設備・技術がふんだんに詰め込まれている。関東における物流業界全体の安全を支えている貴重な存在として知られている。

100年に一度とも言われている大変革期を迎えている物流業界。その確固たる意志で全体を引っ張り会社の基盤を作ってきた創業者からバトンを譲り受ける森本部長が語る、エフテックそして業界への熱い思いとは。

取引先からの一言から生まれた革新的なサービスとは

創業者は森本部長の父である森社長だ。創業のきっかけは幼少期、大きな荷物を抱えた高齢者の自転車がパンクして路頭に迷っていたところを手助けして修理し、手を合わせ感謝された経験から来ていたという。そして中学1年生の頃には、自動車整備士として生きていくことを決めていた。自動車工場の整備士として働いていた24歳のときに個人事業主として独立。同年1974年にエフテックの前身となる有限会社船橋興業を設立し、世界を牽引する日本の自動車産業の成長を追い風に、会社も成長を遂げることになる。

しかし80年代に入りいずれこの好調な事業にも転換期が来ると読んだ森社長は、食品流通業界へも取引先を拡大することとなる。新たな市場へ参入することで、会社の事業基盤をより強固にできると考えたからだ。

 そして1995年、奇しくもエフテックは運命的な出会いを果たす。関西一円を襲った阪神・淡路大震災によって壊滅的な被害を受けたため、千葉県に本社拠点を移してきたある運送会社との出会いがあった。何度か会う機会があった当時の社長から、唐突にこう質問された。「整備業は、我々物流業に対して、何を提供できるのですか?」 

この問いを受け、必死で考えた答えこそが「予防整備」「予測整備」「計画整備」という新たなサービスだった。これは後述する現在の主力サービス「トラックモニタリングサービス」の前身となり、現在は同業他社との大きな差別化を実現している柱の一つとなっている。

「高い経済性」を実現する画期的なサービス群

現在エフテックは4つのサービスを事業の柱としている。順に紹介していこう。

1)   車輌整備事業
車検整備・法定点検及び一般整備を中心とした車輌メンテナンス事業。提供するサービスの全てにおいて予防、予測、計画の概念を重視した整備提案を実施している。壊れてから直すのではなく壊れないようにメンテナンスしている。
またトラックモニタリングサービスでは、自社のメンテナンスカーでクライアント先の駐車場内で計画整備を実施したり、顧客車両の予定管理を代行したりすることでクライアントの機会損失を最小限にとどめている。予防整備・予測整備・計画整備を基本としたエフテックの事業コンセプトの一環として、高い経済性を実現かつ維持している。

 2)   車体整備事業
車体の損傷修理、劣化修理を主に提供している。リフトなどの油圧を用いた積載補助装置の修理・メンテナンスも得意としている。事故などで損傷した車輌は、きれいに仕上げることはもちろんだが、1日でも早く車両をお返しし稼働してもらうことを優先している。

3)   環境事業
DPRアクティブメンテナンス®の展開をおこなっている。一定の距離を走行すると内部のフィルターが煤により閉塞し機能不全になる構造の排出ガス後処理装置。通常詰まったフィルターは高額な新品に交換せざるを得ないが、エフテックでは独自で開発したフィルター再生装置で洗浄再生し、安価で新品同等の性能に復元することが可能だ。
また洗浄装置の製造・販売事業もおこなっている。独自に開発した各種装置を製造・販売し同サービスの提供者を増やすことで、有益なサービスを全国のトラックユーザーへ届けることを望んでいる。修理コスト削減と環境負荷低減に大きく貢献すると期待している。 

4)   架装・製造事業
他社では対応できない小ロット多品種な特殊ボディの生産依頼を、設計から製造まで一貫して行い、ニッチな市場を獲得している。積載効率、作業効率の向上に貢献する荷台をオーダーメイドにて製造しているのだ。

「絶対に物流を止めない」具現化された信念

建設、食品、エネルギー…すべての業界に密接に関わっている物流。過酷な状況下で利用され続けているトラックは、定期的なメンテナンスがされていなければ確実に故障してしまうだろう。ものの流れを止めず、円滑に進み続けるためには整備が何よりも重要だ。基本的に各物流会社はメンテナンスを整備会社に委託することがほとんどだと語る森本部長。絶対に物流を止めないという信念のもと、いろいろなサービスも展開しているという。

「例えば物流会社の駐車場から弊社の工場まで社員さんがトラックを運転して、メンテナンスをして帰社する。たったこれだけでも経営者からしたら見過ごせないくらいの時間とお金がかかっているんです。そして思うわけです、この時間でどれだけの荷物を運べたか…と。そこで弊社はメンテナンス機材を備えた車でクライアントまで赴き、クライアントの駐車場に停めたままトラックのメンテナンスをまとめて行うんです。こんな出張サービスはどの整備会社さんでもできることではありません。」

そして株式会社エフテックのBCP計画は、まさにその熱い思いを具現化した内容だった。もし首都直下型地震が発生したとしても情報の損失を最小限に抑えられるよう、社内の情報をすべてクラウドで管理する体制を構築。そして地質を十分に調査して震災による液状化が起こらない場所に本社機能と車両整備・環境整備部門を移転するために、2020年に本社工場を新しく竣工した。今後の車体整備部門の増築時には、建物の屋根にソーラーパネルを設置し、自社で利用する電力を自家発電で補うという計画もある。 

整備し続ける手を止めてはいけない。整備が止まれば物流が止まり、物流が止まれば経済がとまり、経済が止まれば国は立ち行かなくなる…。株式会社エフテックはそんな強い信念をもとに日々仕事に取り組んでいるのだ。

「入社してよかった」と心から思ってもらうために

エフテックの経営理念は、お客様に『安全と安心、そして高い経済性の提供』を届けることである。これから会社を引っ張っていく存在として、この経営理念を今後も必ず継承していきたいと語るいっぽう、森本部長はその基盤をもとに、市井の人々の認識をアップデートしていく活動も進めたいという。

 昨今の人材不足問題は、自動車整備業界においても例外ではない。とくに一昔前はキツい・汚い・危険の3Kと揶揄されていたこともあった自動車整備業、森本部長は「今の時代はまったく違います。とくに若い方々に、ぜひ弊社の工場を見てほしいですね。」と語る。

整備工場といえばネガティブなイメージをもつ方々が多いが、それは一昔前の話。今の工場の様子やそこで働いている人についての情報が表に出る機会が少なく「知る機会がない」から情報のアップデートができていないだけなのだ。

エフテックは今の業界の真実を伝える責任があると考えており、森本部長は「会社や業界に対してポジティブに働くことであれば何でも行うつもりです。」と語る。業界全体の課題の解決に向けて、さらなる設備投資や待遇改善はもちろん、積極的なメディア出演やSNSの活用などのイメージアップ戦略も進めている。

 「2020年に竣工したばかりですからキレイなのはもちろんですが、整備士が楽な姿勢で点検修理ができる設備を詰め込んでいます。なにより整備が最短ルートで完結するように工場の設計段階から綿密な打ち合わせを重ねていますから、汚れる割合がほかの工場と比べて段違いに低いんです。国内で最も働きやすい整備工場の一つだと自負しています。これから、弊社のような工場設備が一般的になっていきます。ぜひこの洗練された現場を一人でも多くの方に見てもらって、整備士のイメージを払拭していただきたいです。

私たちエフテックは、整備、修理、架装、製造を中心にトータルサービスを提供する整備工場です。整備工場にとっての主役は整備士です。整備士が自信と誇りをもって技術を発揮できるステージとなれるよう、私たちもあらゆる働きかけをしていくつもりです。」

「入社してよかったと社員全員に思ってもらう」ことが私たちの幸せだと熱く語る森本部長。たしかに経営者としてそれ以上の喜びはないだろう。これからもエフテックは業界を牽引する存在として、物流業界を支え続けるに違いない。

株式会社エフテック

本社所在地
千葉県千葉市若葉区上泉町958-56
設 立
1974年10月29日
資本金
1,800万円
事業内容
物流に特化した大型車両の自動車整備業で、整備事業(車検・点検・一般整備)、環境事業(DPRアクティブメンテナンス・環境対策装置の製造・販売)、車体事業(鈑金・塗装)、製造事業(車体製造・車体架装・荷台改装)を柱に据え、大手運送事業者とのB2B契約を通じた整備に特化している。2018年「特殊ボディ製造分野への新事業展開」というテーマで、千葉県知事より経営革新計画の承認を得ている。
企業URL
http://e-ftec.com/
代表者
森 孝司