
1988年、東京都生まれ。専修大学卒業後、中学校講師や飲食業界での経験を経て、2015年に起業。その後、2021年にアクシビワーズ株式会社を設立し、建設機械販売など多角的な事業を展開している。
https://axiviwords.co.jp/教師から経営者へ
時代が進み、街並みが変わっても、人が地面を掘り、土を盛り上げる行為に変わりはない。それを支える建設機械は、大きな轟音とともに、われわれの暮らしの基盤をつくる静かな縁の下の力持ちである。
アクシビワーズ株式会社は、2021年5月に千葉県柏市に設立された、自動車・建設機械の販売買取および修理を行う企業である。代表取締役の久保大海氏は、1988年東京都出身。専修大学を卒業後、非常勤講師、飲食業など異色の経歴を経て起業した人物だ。設立間もない企業ながら、中古建設機械や特殊車両の取り扱いに特化し、解体系や林業系の希少なユンボを仕入れ、独自の修理・塗装技術を駆使して市場に送り出すことで、業界内での存在感を高めている。

潰れてたまるか
雇われ人生からの脱却、そして借金返済。久保の起業の動機は極めてシンプルで、ある意味衝撃的でもある。「やらないと、死ぬ。あのときはただそれだけを感じて、目の前のことに必死になっていました」と語る彼の起業時の覚悟は、並大抵のものではない。
起業したあとも大変だった。彼が事業を立ち上げたばかりの頃、取引相手から一方的に契約を破棄され、大きな損害を被った詐欺まがいの被害を食らったこともあったという。周囲には撤退を勧める者もいたが、久保はその窮地に際し、自分の中に眠っていた闘争心を発見した。「こんなことで潰れてたまるか、と思いました」強烈な反骨心が彼を奮い立たせた。この出来事をきっかけに、久保は経営に対して今まで以上にシビアに数字を追求するようになった。ただ漫然とビジネスを続けるのではなく、利益を生むための戦略と緻密な計画を徹底して練り上げ、短期間での業績改善を実現したのだ。

口ではなく行動で語れ
経営に対する彼の姿勢は一貫して「口動より行動」、つまり理想や目標を語ることは誰にでもできるが、それを現実のものにするには具体的な行動が絶対的に必要だと、彼はつねに強調している。その信念を証明するように、久保は創業後間もなく中古車販売から始まり、建設機械販売、中古車や建機の修理業、軽運送業と、次々に事業領域を拡大していった。何か一つがうまくいかないときも立ち止まることなく、新しい事業機会を模索し、積極的な挑戦を継続してきた。その結果、現在では業界内で確かな地位を築きつつある。
現在、久保が最も力を注いでいる建設機械販売事業では、林業や解体業界向けの特殊な機械を仕入れること自体容易ではないものの、久保独自のネットワークを活用して希少な機械を入手し、それら一つひとつに、高い修理技術と丁寧な再生工程を経て、新たな価値を生み出している。古びた機械を再び生命を吹き込むかのように再生させる彼の手腕には、絶大な信頼がある。そして他社が手掛けられないような難易度の高い案件にも積極的に挑戦し、その成功が市場での評価をさらに高めている。
地域に根差した経営も、久保の大きな特徴だ。千葉県柏市に本拠を置いた理由として彼はこう述べている。「やはり首都圏のなかでは土地が安価であるという地理的要因もあります、ただやはり、この土地に互いに助け合える仲間がいるのが大きいですね」。久保は日常的に地域の人々と交流を深め続け、そして困ったことがあれば、お互いに助け合いながらビジネスを展開している。こうした地元との強固な絆が、企業の安定運営と急速な成長を支えているのだ。
そんな久保の仕事へのこだわりは非常に強烈で、「現状維持は後退」と断言するほど停滞を忌み嫌う。つねに新しい課題に挑戦し続け、自分自身と会社の能力を高めていくことを信条としている。明確な目標を掲げて、それを実現するための具体的な行動を欠かさないという、前のめりな姿勢を維持することこそが彼の最大の強みだ。

自分自身に許可を出す
建設機械のシャベルが土を掘り返すたび、過去に埋もれた思い出や歴史がむき出しになる。これまで誰も気づかなかった層が、まるで剥き出しの神経のように外気に触れ、一瞬だけ光を浴びる。そして、またすぐに押しつぶされ、新しいコンクリートの下へ消えてゆく。それでも人は掘り続ける。新たな高層ビルを建て、より快適な生活を求めて。
果てしない破壊と創造の循環のなかに、久保は今立っている。壊し、再び生み出す。新たな価値を発見し、古いものに新しい生命を吹き込む。久保はこの現場に、自らの経営哲学を重ねる。どれほどの成功を掴んだとしても、次の目標を掲げ、それに向かって掘り続けることをやめない。
「なぜか”自分にはできない”と、自分自身にあえて枷をかけている若い方が非常に多いなと思います。でもそれって、なんだかおかしいんじゃないかと思うんです。あなただってビジネスをやって構わないし、考えを発信したって誰も不幸にはならない。自分もやっていいんだって、言うなれば許可を出すように自分に問い質してみると、一歩でも前に動けるようになるんじゃないかなと思います。自分でやってみると、人生きっと、よりよくなります」
「口で語る夢ではなく、現実を動かす行動を」そう願う彼の闘いに終わりはない。
