株式会社ろくや
渡邉 丈宏

千葉県出身。東京都で働いた後、株式会社ろくやに入社。後に同社代表取締役に就任、現在に至る。

内房の魅力を感じられる『ろくや』

千葉県南房総市、リゾートが立ち並ぶ岩井の地に居を構えている『網元の旅館 ろくや』。そのほか「なぎさ食堂」や「海のマルシェ」など多角的に事業を運営し、千葉の自然の豊かさ、農水産物の魅力をトータルでお客様に日々伝えている。

そんな株式会社ろくやを牽引している渡邉代表に、話を伺ってみた。

事業を引き継いだときの覚悟

現在のろくやリゾートの礎は、渡邉代表が先代から事業を継承したそのときからつくられたといっても過言ではない。

当時の内房といえば、レジャーといっても夏の海水浴くらいしかなく、地域観光のほかに魅力的なものが特段存在しなかった、民宿のほとんどは臨海学校や郊外体験の学生団体を対象に運営しており、決して全ての民宿が十分潤っているという状況ではなかったが、そのまま時が過ぎていく地域だったという。

このまま続けていても、なにも拡大につながらない。そう感じた渡邉代表は、事業継承後、すぐにろくやの改革に踏み出した。

内房の魅力は、ないのではなく、見えていないだけ。そう感じた渡邉代表は施設の大規模な拡大に踏み切る。貸し切り温泉をはじめ、館山市のサービスエリアでは千葉の自然豊かな魅力を堪能できる飲食店や土産物店をオープンし、観光客の心をわし掴みにすることに成功した。

施設の拡大に奔走していた渡邉代表。しかし当時最も大変だったのは会社の資金繰りだったという。特に事業継承後におこなった金融機関との交渉について、渡邉代表は当時を振り返る。「もう本当に大変でした(笑)。でも私が諦めたら、ろくやも従業員も終わりなんです。そう考えると、何としてもこのろくやを復活させなければならないなと思いながら、交渉を続けていました。」

当時崖っぷちに立たされていたろくやを支えてくれた学校団体を、渡邉代表は今も変わらず受け入れているという。「恩返しかな」と微笑む顔が印象的だ。

“高い稼働率”がお客様も社員も幸せにする

現在ろくやリゾートでは、定置網を活かした料理の評判が高い「網元の宿ろくや」、リゾートとリトリートの要素を満喫できる「鏡ヶ浦温泉rokuza」、そしてを“渚の駅たてやま”で房総半島の魅力あふれる食事や買い物が楽しめる「なぎさ食堂」「海のマルシェ」「パティスリーソラネル」を提供している。

形態は異なるが、どの施設も共通していることは“高い稼働率”だと渡邉代表は語る。

そしてその高い稼働率を維持している秘訣は、渡邉代表自身による現場へのこだわりにあるという。「とにかく重要視しているのは、お客様にワクワクと驚きを提供すること。そのために毎朝、私自身が現場に立ち、その日の現場の動きや雰囲気を読み取り、従業員が1WAYで2JOBどころか3JOB以上をこなすことができるよう、現場の改善を常に指示しています。」と話す渡邉代表には、ろくやリゾートへの深い愛情を感じた。

「自分たちのことだけをやればいい」ではダメ

現在に至るまで圧倒的な高稼働率を誇る経営を行っているろくやリゾートだが、渡邉代表は先のコロナショックによる影響が少なからずあったと語る。しかし渡邉代表は他社とは全く異なる戦略をとっていた。

周囲の旅館や観光施設が肩を落としているなか、渡邉代表は赤字覚悟で旅館を閉め、従業員の雇用を守るべく、なんとECサイトで販売する自社オリジナルのプロダクトを開発することに。それが「房総真鯛と黄金鰺のお茶漬けセット”彩”」だ。

南房総で水揚げされる真鯛と黄金鰺を使用したお茶漬けの切り身は、鮮度にこだわった網元ならではの極上品。総料理長のこだわりが詰まった専用のダシが評価され、後に2021年における「食のちばの逸品を発掘」で金賞を受賞する運びとなる。暗くなっていた内房を明るくさせる希望をつくりあげたのだ。

また、2019年に房総半島に上陸した台風で被災したときは、旅館の食材を使って地域の人たちに元気を、という思いで炊き出しも行った。

自分たちの事業だけを狭い視野で見つめるのではなく、困ったときこそ広い視点で、今私たちに何ができるのか。「常に笑顔を」と社員に言い続ける社長のその思いが、会社として大切にしているものなのかもしれない。

私たちの想いと今後

お客様に楽しんでいただくことや驚きを提供することは今もこれからも変わらないのではないかと語る。

現在は、この経営手腕を見て、全国各地の同業経営者が訪れている。具体的なアドバイスや手腕を語ることもあれば、実際に自社施設に宿泊を体験いただくなど対応は様々。

「網元の宿ろくや」であるという軸は常に変わらないが、お客様や同業の経営者まで、さまざまなシーンで対応することが増えた今、ろくやリゾートとしての活動の場面はさらに広がりを見せている。

地域の同業者が加盟する団体を作ったり、地域の観光行政にも意見を述べるなど、新しい交流が地域の発展に寄与するに違いないと渡邉代表は語る。

渡邉代表率いるろくやの今後に目が離せない。

株式会社ろくや

本社所在地
千葉県南房総市久枝494
設 立
1970年11月
資本金
1,000万円
事業内容
旅館・ホテル・レストラン・物産店・ケーキショップの運営、水産加工業、通販サイトの運営。経済産業省が選ぶする「地域未来牽引企業」に選定。
企業URL
http://www.rokuya-resort.com/
代表者
渡邉 丈宏