IBM BIG BLUE

1976年にIBM社内の同好会として創設。東日本実業団リーグでの経験を経て2001年にXリーグ1部へ昇格する。日本IBMスポーツ株式会社の支援のもと、千葉市美浜区を拠点とし、伝統と革新を両立するクラブチームとして運営される。現在はXリーグ1部:X1 Superに所属し、ライスボウル優勝に向け活動中。

http://www.bigblue-football.com/

幕張の青い鎧球軍団

クォーターバックが放つロングパス。守備の隙を突いて走り抜けるワイドレシーバー。絶妙なタイミングでボールをキャッチすれば、シナリオが用意されていたかのようにスタジアムが熱狂に包まれる。その背後ではラインマンたちが重厚な肉体をぶつけ合い、目に見えない戦いを繰り広げる。まるで協奏曲のような連携プレーで、チーム一体となって勝利を目指す。アメリカンフットボールと呼ばれるその競技には、剛と柔が交差するドラマがある。

幕張新都心エリアに、青く輝くアメリカンフットボールチームがある。日本IBMグループが運営する、約50年の歴史をもつIBM BIG BLUEは現在、日本の最上位に位置する社会人リーグの”Xリーグ”1部:X1 Superに所属している強豪だ。

(指導中のMike Phairヘッドコーチ)

強豪たる所以

BIG BLUEは1976年、日本IBM社内のアメフト経験者たちによって、同好会として創部されたのが始まりだ。1996年のリーグ再編によりXリーグが発足し、BIG BLUEは2部リーグからスタート。昇格のための決定的な一戦が起こったのは2001年、全選手が一丸となって、1点差の優勢を死守して勝利。創部から四半世紀を経てついに1部昇格を決めた瞬間であった。

そして2010年には元Xリーグの名ラインバッカー・山田晋三がヘッドコーチに就任。春の公式戦パールボウルで2016年に初優勝したのを機に、名実ともに東日本の強豪として認知されるようになる。

2019年には日本IBMの100%出資の子会社として日本IBMスポーツ株式会社が設立され、チーム運営力強化を専門に担わせる体制が構築された。翌年には本拠地を千葉市美浜区へ移転し、BIG BLUEはさらなる勝利を見据えて鍛錬を重ねている。

2024年よりヘッドコーチとして就任したのがMike Phair(マイク・フェアー)だ。本場アメリカで20年以上の実績を持つ彼は、長期的には日本最大級のアメフト日本一決定戦・ライスボウルでの優勝を目指しつつ、まずは強固な基盤の構築を最優先にしていると語る。

「チームにはすばらしい選手とスタッフがいます。しかしどんなに優秀でも、やるべきことをしっかりと遂行しなければ、優勝を目指すことはできません。私には、一日一日を大切にするというフィロソフィーがあります。BIG BLUEのヘッドコーチとして、チームが成長できる土台を必ず作っていきます。」

「ハイブリッド型」チーム編成

BIG BLUEに、影の立役者がいる。日本IBMスポーツ株式会社の代表取締役社長、松本宗樹だ。

学生時代からアメリカンフットボールに情熱を燃やしていた松本は、日本IBM入社と同時にBIG BLUEのメンバーとして芝生に立った。以後9年間にわたり、BIG BLUEの選手として副将、さらにはキャプテンとしてチームを牽引。選手として戦場を駆け抜ける日々は、まさに己との戦いだった。

その後、引退を迎えた彼は、さらなる高みを目指して大学院でマネジメントを学ぶという選択をする。そしてチームのゼネラルマネージャーを約10年間務め、現場と経営の両面からチームを成長させる重要な役割を果たす。2024年に日本IBMスポーツ株式会社の代表として再び経営に戻り、現在は日本IBM本体の人事労務部長を務める傍ら、BIG BLUEの経営戦略や地域貢献活動を指揮している。

松本のマネジメントの強みは、多様性を積極的に取り入れた「ハイブリッド型」のチーム編成にある。社員選手にとどまらず他企業の社員や海外選手を加え、各人の強みを生かしながらチームを活性化させている。さらに、地域社会との交流にも情熱を注ぎ、地元幕張の小学校でのフラッグフットボール授業や地域の清掃活動、ショッピングモールでの交流イベントを通じて、地元に愛されるチーム作りを実践している。

松本が現在進めている重要なプロジェクトは、IBMの技術をスポーツ分野へ積極的に融合させる試みだ。IBMがウィンブルドンやNFLなど世界的なスポーツイベントで培ったデータ分析やAI技術を活用し、スポーツの新しい可能性を模索している。数字や統計だけでは測りきれない、人と人との絆を基盤にした経営そのものを彼は体現しているのだ。

挑戦できる機会は限られている

デジタル技術を駆使した戦術分析、選手のパフォーマンス管理、そして地域社会との一体感をさらに深化させることで、BIG BLUEは未来のスポーツマネジメントの新たなスタンダードを打ち立てようとしている。そして、競技人口が減少傾向にあるアメリカンフットボールの課題を直視しつつも、その魅力をどう伝えるかを真摯に、つねに模索している。

松本は語る。「人生は有限です。挑戦できる機会は、実は限られている。だから、挑戦するか迷った時こそ、勇気をもって飛び込むという選択をしていただきたいと思っています。自信を持って挑戦すれば意外と通用することが多いですし、失敗したとしても糧にならないわけがない。そして、自分の枠を超えないといいプレーなんてできませんから」

松本 宗樹(まつもと むねき)慶應義塾大学卒。1998年、日本IBM株式会社に入社。IBM BIG BLUEの選手として9年間活動し、うち副将およびキャプテンを務める。選手引退後は大学院でマネジメントを学び、チームのGMを約10年間担当。2019年の日本IBMスポーツ株式会社設立後、2024年6月から代表取締役社長としてチーム経営に復帰。現在は日本IBM本体で人事労務部長として活躍しつつ、IBM BIG BLUEの経営戦略、財政基盤の強化、地域貢献活動などを統括。

Mike Phair(マイク フェアー)1969年米国アリゾナ州生まれ。1999年、アリゾナ州立大学のアシスタント兼コーチとしてキャリアを開始する。2003年にはタンパベイ・バッカニアーズのスーパーボウル制覇に貢献。通算でプレイオフ出場4回、スーパーボウル出場2回の実績を誇る。その他NCAA、NFL、CFLでコーチキャリアを経て、2023年からBIG BLUEに参画。2024年からヘッドコーチに就任。